2026年5月15日、内務省(Ministry of Home Affairs)大臣は、電子労働契約に関する政令第337/2025/ND-CP号のいくつかの規定の実施を指導する通達第08/2026/TT-BNV号(以下本通達といいます)を発行しました。本通達は2026年7月1日より施行されます。
1. 規制範囲
本通達は、以下に関する詳細な規制を定めるものです:
電子労働契約識別コード(ID)の発行;
電子労働契約プラットフォーム(以下「プラットフォーム」)へのアクセスアカウントの発行、停止、および再有効化;
各電子契約プラットフォームと国家プラットフォームとの接続;
プラットフォームの管理、利用、および運用;ならびに
データの更新、保管、および共有。
2. 電子労働契約識別コード(ID)
ID発行の原則(第4条):
各労働契約には、重複のない固有のIDが1つ割り当てられます。このIDは、契約のライフサイクル全体(変更、補足、一時停止、または解約・終了を含みます)を通じて不変です。
付属書(覚書)、一時停止通知、および解約・終了通知には、元の契約と同じIDを使用するものとします。
このIDは、有権限の国家機関による公式の管理コードとして機能するものであり、契約の締結日や法的有効性を変更するものではありません。
IDの構成(第5条):
アルファベット1文字 + 数字12桁。
アルファベット文字:
A: 2026年7月1日以降に、要件を満たした電子契約システムを通じて締結された契約;
B: 紙の形式から電子形式に変換された契約;および
C: 2026年7月1日より前に締結された電子契約。
数字12桁:
IDが発行された年の西暦の下2桁;および
ランダムに生成される10桁の数字。
IDの発行手続き(第6条):
電子契約サービスプロバイダーは、契約書および認証データをプラットフォームに提出します。
プラットフォームは情報を検証し、受領から24時間以内にIDを発行します。IDは、管理および保管の目的で電子契約プロバイダーに返還されます。
3. プラットフォームへのアクセスアカウント
従業員および雇用主は、自身の「VNeID」電子識別アカウントを使用してプラットフォームにログインするものとします。
組織(法人)としての電子識別アカウントを持たない組織は、内務省に対して個別のシステムアカウントの発行を申請することができます。
アカウントは、(要請があった場合、有権限機関の決定による場合、サイバーセキュリティのインシデントが発生した場合などに)停止されることがあり、必要な条件が満たされれば再有効化されます。
4. 電子契約システムと電子労働契約プラットフォームとの接続
電子契約サービスプロバイダーは、内務省に対して接続申請書類(様式第01号)を提出しなければなりません。内務省は、20営業日以内に検査および技術テストを実施するものとします。
本通達では、接続の停止、終了、および復旧に関する手続きが明確に規定されています(第10条~第12条)。
接続が終了した場合、すべてのデータはエンドユーザーへ完全に移行されなければなりません。
5. データ管理と保管
データ保持期間: 契約終了日から10年間(または、連続して複数の契約がある場合は最後の契約の終了日から10年間)です。
データの分類:
マスターデータ;
オープンデータ;および
共有利用データ。
雇用主、電子契約プロバイダー、および各地域の内務局(Departments of Home Affairs)は、プラットフォームを通じて定期的な報告書を提出することが義務付けられます。
6. 関係当事者の責任
電子契約サービスプロバイダー:
データメッセージの認証の確保;
システムの接続性の維持;および
定期報告書の提出。
雇用主:プラットフォームを通じた労働情報の変更報告。
従業員:VNeIDアカウントを使用した、自身の労働契約のアクセスおよび確認。
内務省がプラットフォームの統括管理機関として機能します。
7. 経過措置
2026年7月1日以降、新しく締結されるすべての電子労働契約は、IDの発行を受けるために電子労働契約プラットフォームに提出されなければなりません。
接続承認を待っている既存の電子契約システムは、2026年7月20日まで運用を継続できますが、それまでに接続手続きを完了しなければなりません。
8. 寸評
本通達は、電子労働契約の国家管理が本格化するという観点から注目に値するものです。
また、契約IDは実質的な追跡番号となり、将来的には社会保険データや個人所得税データと統合されることになるかもしれません。そうなれば、ベトナムは国家としてより個人の納税義務や公的保険納付義務履行状況を掴み易くなります。
また、電子労働契約に政府肝いりのVNeIDを絡めてきているところも、デジタル化という文脈からは合理的ですが、未だVNeIDを有していない外国人等の関係で混乱が生じることも予想されます。
現状本通達は電子労働契約を締結する場合にのみ適用され、労働契約の電子化を強制するものではありません。ただ、将来的には電子化マストとなる可能性も相応にあり、引き続き注視を要するところです。
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