Search

【AGS法務部ニュース】最新法令のアップデート: 改正企業法の可決

 2020年6月17日、第14期第9回国会において、改正企業法の草案が承認されました。企業に対する行政手続の簡素化、投資家や株主の権利・利益の保護に関するメカニズムの改善等が盛り込まれたこの草案に基づく改正法(以下、「改正法」)は2021年1月1日より施行されることになっています。

 その概要は以下の通りです。

1.会社印鑑の登録通知義務に関する規定の削除

現行の企業法第44条2項に基づき、企業は営業で使用する前に、国家企業登記ポータル上で公開するため、印章の印影を経営登記認可機関に通知する義務を負います。

しかし改正法では、印章の印影を経営登記認可機関に通知することは不要とすることになっています(改正法第43条)。

2.経営世帯については別法にて規定される予定

一般的な企業と比べて活動・規模等の点で異なる経営世帯(個人事業主)は、改正法の対象ではありません。その代わり、別法となる経営世帯法にて規定される予定です。

3.ベトナムにおいて企業を設立し、管理する権利を有しない対象の追加

現行の企業法第18条2項に基づき、以下の個人および組織は、ベトナムにおいて企業を設立し、管理する権利を有しないこととされています。

a) 国家機関または人民武装部隊で、その機関または部隊の固有の利益を得る経営を行う企業を設立するために、国の財産を使用するもの。

b) 法令に定める政局幹部、公務員、準公務員に該当するもの。

c) ベトナム人民軍隊に属する各機関、部隊の士官、下位士官、専業軍人、国防工員、準公務員。人民公安に属する各機関または部隊の士官、専業の下位士官。ただし、企業において国の持分を管理するための委任代表者として選定されたものを除く。

d) 国営企業の指導、業務管理幹部にあたるもの。ただし、他の企業における国の持分を管理するために委任代表者として選定さ れたものを除く。

e) 未成年者。制限民事行為能力または民事行為能力喪失者。法人格を有しない組織。

f) 刑事責任の追及、懲役刑の執行、強制麻薬中毒治療施設または矯正教育施設へ入所させる行政処分を受けている者または裁判所の決定に基づき経営を行うこと、経営に関係する一定の職務を担当しもしくは業務を行うことを禁止されている者、破産者、汚職防止に関する法令の規定に基づくその他の各場合。

改正法では、更に次の項目を追加することになっています(改正法第17条2項)。

g) 刑法に基づき、特定の業界でビジネスまたは活動を禁止されている法人の組織。

4.国営企業にて定款資本率の変更

現行の企業法第4条8項に基づき、「国営企業」とは、国が定款資本を100%保有する企業をいうと規定されています。

改正法では、「国営企業」とは、国が定款資本を50%以上保有する企業をいうという規定へ変更されます(改正法第4条10項)。

5.普通株式に係る権利を有する株主の範囲の変更

現行の企業法第114条2項に基づき、6ヶ月以上継続して普通株式総数の10%以上または会社の定款に定めるそれよりも少ない割合の株式を保有する株主または株主グループは、以下の権利を有することになっています。

a) 取締役会と監査役会への人事の推薦

b) 取締役会の議事録簿および各決議、ベトナムの会計制度の書式に従った半期および年次の財務報告書ならびに監査役会の各報告書を検討し、謄本を作成すること

c) 本条第 3 項に規定する条件に該当する場合、株主総会の会合の招集請求

d) 必要と認める場合、監査役会に対し、会社の管理運営活動に関わる具体的な事項について検査を請求すること。 請求は書面によってなされなければならず、個人である 株主の氏名、恒久的住所、国籍、公民身分証明カード、人民証明書、旅券またはその他の合法的な個人身分証明書の番号。組織である株主の名称、所在地、国籍、設立決定書または企業登記の番号。株主ごとの株式の数および株式登録時点、株主グループの株式総数、会社の株式総数における 保有株式の割合。検査すべき 事項、検査目的を記載しなければならない。

e) この法律および会社の定款の規定に基づくその他の各権利

改正法では、上記権利の対象は、「普通株式総数の 5 %以上または会社の定款に定めるそれよりも小さな他の割合を保有する株主または株主グループ」に変更されることになります。

6.個人投資家による私募形式の社債取引の制限

現行の企業法等に基づき制定された社債発行に関する政令No.163/2018/ND-CPにおいては、私募形式の社債を購入できる対象はベトナムの個人・組織および外国の個人・組織とされています(第8条1項)。

しかし、社債発行企業による情報開示や個人投資家によるリスク分析が不十分な状態における私募形式の社債取引による個人投資家や市場への影響を考慮し、改正法第128条2項に個人投資家による私募形式での社債取引を制限する規定が追加されています。

以上

Japan
Vietnam