2020年6月15日、ベトナム労働総同盟が現行の労働組合法No.12/2012/QH13 (「現行法」) を改正する法案 (「本法案」) を作成し国会へ提出しました。本法案の重要点は以下の通りです。
なお、2021年7月1日の本法案の施行に向けた国会審議、可決が予定されていますので今後の動向にご留意ください。
1.労働組合の参加対象現行法では労働組合を設立・参加できるのはベトナム人でなければならず、日本人を含めた外国人労働者は企業内労働組合に参加することはできません。しかし、本法案では、企業内労働組合の幹部がベトナム人である必要があるだけで、その国籍にかかわらず全ての労働者に労働組合の設立・参加の権利を認めています。
2.ベトナム労働総同盟による統一管理本法案において、ベトナム労働総同盟が全体的な管理し、非専従労働組合幹部を配置する権限、およびベトナム労働総同盟と上部労働組合、企業内労働組合との間の統一性が強調されています。ベトナム労働総同盟より非専従労働組合幹部の配分権限も追加されます。ベトナム労働総同盟の2014年12月31日付の決定No.1617/QĐ-TLĐに添付される規定により、企業内労働組合参加者の人数が1,000以上の場合、非専従労働組合幹部が配置されることになっています。
3.労働者の団体の労働組合加入権現行法では労働者個人の加入権限のみが認められていますが、本法案では労働者の団体(組織)がベトナム労働組合に加入する権利の規定も追加されています。なお、この労働者の団体(組織)の設立や権限、義務等の詳細な内容は本法案の下位法令によっても規定される予定です。
4.労働組合の設立権および加入権に害する禁止行為の詳細的な説明現行法の「労働者が労働組合を設立したこと、または労働組合活動に加入したことを理由に、労働者を差別するもしくは労働者の利益に損害を与えること」(第9条2項)という禁止行為に対し、本法案では更に詳細に次の4つの禁止行為を列挙しています。
・新規採用・労働契約締結または期間延長に際し、労働組合への加入・非加入・脱退を要求すること。
・解雇処分、その他の懲戒処分、労働契約の一方的解除、労働契約の継続(新契約書)・更新(附録)の拒否、配置転換を行うこと。
・賃金・労働時間その他の労務関係における権利・義務に関し、労働者を差別すること。
・労働組合の活動を弱体化させるために、業務上の困難を引き起こしまたは業務を妨害すること。
5.非専従労働組合幹部の「労働組合任務を履行するために必要となる最低限の時間」現行法では「労働組合幹部が非専従で労働組合活動を行う場合、当該労働組合幹部は、勤務時間の一部を労働組合活動に使用する権利を有する。企業内労働組合の委員長若しくは副委員長は、1ヶ月に勤務時間の内 24 時間、また、労働組合執行委員会の委員、労働組合のリーダーまたはサブリーダーは、1ヶ月に勤務時間の内 12 時間を労働組合活動に充てることができるものとし、労働組合活動に充当した時間についても通常の賃金が支払われるものとする。」(第24条2項)という詳細な規定があります。
他方、本法案では「非専従労働組合幹部は、労務法令に従い、労働組合任務を履行するために必要となる最低限の時間を使用し、これに対して会社から賃金を受け取る権利を有する」という規定に変更されます。その他、労働組合任務を履行する時間の延長は、労働組合執行委員会と会社との協議に任せるという点はそのまま維持されています。「労働組合任務を履行するために必要となる最低限の時間」の詳細については、今後政府の政令によって規定されます。
6.労働組合経費の分配現行法では、会社が支払う労働組合の経費は全部の労働者の社会保険料を差し引いた賃金基本額の 2%と規定されていますが、企業内組合・上部団体間の分配については規定されておらず、ベトナム労働総同盟の決定に委ねられています。これに対し、本法案では労働組合経費の分配の追加規定として、国会に以下の2つの法案が提出されています
・第1案:労働組合が2つ以上ある会社の場合、全ての労働組合経費は各労働組合へ割り当てられます。分配方法の詳細は政府の規定により規定されます。
・第2案:徴収された労働組合経費の70%は、法令およびベトナム労働組合定款に従い義務を履行するために、企業内労働組合に割り当てられます。
以上