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【ブログ】ベトナムの物価上昇率と最低賃金

皆様こんにちは。

AGSホーチミン事務所の会計・税務部でインターンをしている川島と申します。

ベトナムに来て早いもので3週間が経ちました。

今回はベトナムの物価上昇率と最低賃金についてお話しします。

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 (掲載元: http://www.cnbc.com/2015/08/19/vietnam-devalues-the-dong.html)



海外に行く人の多くが関心を持つものとして、その国の物価が挙げられると思います。

こちらに来てスクーターの数やインターン先でお昼寝タイムがある等色々と驚かされることは多いのですが、その中でも物価の安さには目を見張るものがあります。ベトナムに来る前にオーストラリアで生活をしていたのですが、東京以上の物価の高さに毎日驚かされていました。通常オーストラリアで夜外食(低価格帯のレストラン)をすると軽く1,000円は超えてしまいますが、ベトナムではその3分の1程度で済むため非常に助かっています。

オーストラリアの物価が高い最大の理由は、従業員に対する賃金にあると考えられます。最低賃金は、労務問題全般を取り扱うオーストラリアの機関、フェアワークオンブズマン(Fair Work OMBUDSMAN)によると2017年7月現在時給ベースで約1,600円であり、厚生労働省が発表している平成28年度の日本の最低賃金時給823円と比較しても非常に高いことがわかります。対してベトナムの最低賃金は地区ごとによって算定されており、賃金に関連するサービスを提供する団体、ウェイジインディケータードットオルグ(Wagelndicator.org)によると月給ベースで約13,000円~約18,600円になっています。このレンジは都市部と地方の間で賃金格差があることを示しており、また先述の2ヶ国の時給ベースの最低賃金と比べると非常に僅少でこれがベトナムの物価を安く抑えている原因の一つと言えそうです。

このように考えると長期的には物価と賃金の間に相関関係があると想定されるため、ベトナム国内においてこれ二つの変数が過去どのように推移し、今後どのようになっていくのかについて話していきます。

過去から現在

まずベトナムの過去から現在にかけての物価と賃金の推移について見ていきます。物価の上昇率を測定する際に消費者物価指数(以下CPI)があります。この指標は消費者が商品を購入するための費用をある年を基準として、その変動率を表示する指標です。非常に簡易な例を挙げるとフォー(ベトナムでポピュラーな米粉麺)の値段が2010年に100円であったのが2015年には300円になっていた場合、CPIは2010年を基準年とすると300となります。

以下のCPIに関するグラフをご覧になるとわかると思いますがベトナムの物価は先進国と比較すると非常に高い水準で上昇しており、他の経済成長率が高いと言われているカンボジアや中国と比べても依然として増加率が高くなっています。

一般的に中長期的には物価の上昇と賃金の上昇には正の相関関係があるとされていますが、ベトナムにおいてもそれは当てはまりそうです。以下のグラフは1ベトナムドン=0.005円として換算したものです。月給ベースの最低賃金は年々上昇しており、2017年は2011年と比較すると2.4倍増加していることが読み取れます。このように最低賃金と物価の上昇は連動していることが分かります。これらのデータに基づくと物価上昇を賃金上昇が相殺する形で推移してきたようにも思えますが、ベトナムの実態はどのようになっているのか疑問が生じます。ベトナム大手新聞社、ヴィーエヌエクスプレス(VnExpress)の6月28日付けの記事によると、2018年の年棒は労働者を代表するベトナム労働総連盟の要求率13.3%上昇に対して雇用者を代表とするベトナム商工会議所は5%のみの上昇を提案しており、過去10年間で最も低水準であった2017年の7.3%からさらに下がる形となると報じています。

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今後の予想

ベトナムのCPIと最低賃金はこのように年々上昇していることがわかりましたが、今後どのように推移していくのでしょうか?先述のように物価の上昇に対して賃金の上昇が不十分であると労働同盟が主張しており、最近数年のCPIが4-5%で変動していることを考慮すると2018年の5%の賃金引き上げは十分でない可能性があります。さらに統計データを提供する会社、トレーディングエコノミクス(Trading Economics)によると2020年のCPIは123になると予想され、今後も物価上昇基調は継続すると考えられることから最低賃金の引き上げ率はベトナム国民にとって非常に重要な指標であると言えます。また日系企業がベトナム進出を考える際に人件費の安さを魅力の一つに挙げることが多いですが、今後も人件費の上昇が恒常的に続くとなるとこの傾向が中長期的に変わる可能性もありそうです。

まとめ

今回はベトナムの物価上昇率と最低賃金の観点からベトナム経済の過去・現在・未来についての考察を行いました。将来的にベトナム進出を考える日系企業にとって特に最低賃金の上昇はコスト増につながるため、関連する指標を含め注視する必要がありそうです。

今回はこの辺で失礼させていただきます。

川島

2018年の最低賃金はこちら

参照元:



Fair Work OMBUDSMAN:

https://www.fairwork.gov.au/about-us/news-and-media-releases/website-news/get-set-for-a-3-3-increase-to-minimum-wages-2017-annual-wage-review



厚生労働省:

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/



Wagelndicator.org:

http://www.wageindicator.org/main/salary/minimum-wage/minimum-wages-news/vietnam-minimum-wage-to-rise-7-3-in-2017-october-1-2016



AmCham Vietnam:

http://www.amchamvietnam.com/vietnams-2016-minimum-wage-proposal/



VnExpress(06/28/2017):

http://e.vnexpress.net/news/business/vietnam-s-employers-unions-fight-again-over-wage-increase-3605759.html



Trading Economics

https://tradingeconomics.com/vietnam/consumer-price-index-cpi/forecast

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