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【ブログ】日本企業のベトナム進出(進出形態編)

I. はじめに

 皆様こんにちは!

 AGSリーガルチームの杉原です。

 ベトナムの街中には、日本でお馴染みのコンビニエンスストア、飲食チェーン店、家電製品、スナック菓子等、日本の会社の看板や日本発の商品で溢れています。特に、ホーチミン市最大の日本人街であるレタントンを歩いていると、「あれ…ここって、ベトナム!?」と一瞬戸惑うほど日本で染まっています。私のような一個人でさえこのように感じ取れるということは、それだけ多くの日本企業が進出しているということなのでしょう。

 実際に日系企業のベトナムへの進出状況をJETROのHPで調べたところ、2017年3月時点での進出企業数は1,637社(北部(ハノイ等):652社/中部(ダナン等):109社/南部(ホーチミン等):876社)でした[ⅰ]。ビジネスチャンスという観点からすると、皆さんはこの進出状況・進出企業数に関しどのように感じますでしょうか。「そんなに多いの!?出遅れたな…」と思う方もいれば、「まだまだチャンスがありそうだな!」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 さて、長らく婚姻制度・離婚制度をテーマとして扱っていましたが、今回のブログからは、テーマを「日本企業のベトナム進出」とし、進出に関する様々な情報を皆さんにご紹介したいと思います。第1弾は、「進出形態編」です!

 本ブログが、多くの方のベトナム進出の第一歩となれば幸いでございます。

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II. 進出形態

 本ブログでご紹介するベトナムへの進出形態は、現地法人及び駐在員事務所の設立です。それぞれの進出形態について確認してみましょう。

III. 現地法人

 ベトナムにおける企業類型には、(ⅰ)有限責任会社、(ⅱ)株式会社、(ⅲ)合名会社、(ⅳ)個人企業があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
企業類型 特徴
(ⅰ)有限責任会社 ・株式を発行できない

・社員数は50人まで

・社員の責任は、間接有限責任[ⅱ]

・資本の譲渡は、他の社員の優先買取権に服する
(ⅱ)株式会社 ・定款資本が株式という均一の複数の部分に分割されている

・株主数は最低3人必要であり、最大株主数に制限はない

・株主の責任は、間接有限責任

・株主は、企業法所定の例外の場合を除いて自由に株式を第三者に譲 渡できる
(ⅲ)合名会社[ⅲ] ・2名以上の社員が会社の事業主として1社の名義で経営を行う

・合名社員(無限責任社員)は個人でなければならず、かつ、会社の各 義務について自己の全部の財産をもって責任を負う(無限責任)

・資本払込社員(有限責任社員)の責任は、企業に払い込むことを約 束した資本額の範囲に限定される(有限責任)
(ⅳ)個人企業 ・無限責任を負う個人によって所有される会社

・所有者が直接に会社の経営を行い、法定代表者を務める
*「有限責任」とは、会社の債権者に対して出資額を限度として責任を負うことをいいます。「間接有限責任」とは、債権者に直接責任を負うわけでなく、出資した会社に出資額の範囲で責任を負うことをいいます。「無限責任」とは、会社の債権者に対して負債総額につき全額を支払う責任を負うことをいいます。
(ⅰ)有限責任会社は、社員数に応じて二人以上有限責任会社(2~50名)と一人有限責任会社(1名)に分類されます。また、有限責任会社は、日本企業がベトナムへ進出する際の進出形態として多くのケースで採用されています。株式会社よりも多い理由は、有限責任会社が株式会社に比べ少ない出資者で設立することができる点や、内部機関の構成が簡易である点にあります。

【企業類型別構成機関】
一人有限責任会社[ⅳ] 二人以上有限責任会社[ⅴ] 株式会社






・出資者が法人の場合

会長/社長/監査役

・出資者が個人の場合

会長/社長(兼務可)
社長/社員総会/会長

*11名以上の社員を有する場合:監査役会が必要
株主総会/取締役会/社長

*個人の株主が11名以上もしくは会社の総株式の50%以上を所有する法人の株主がある場合:監査役会が必要

IV. 駐在員事務所

 駐在員事務所とは、外国企業の一部としてベトナム国内において設置される事務所のことをいいます。営業活動を行うことは禁止されており、情報収集や連絡機能のために拠点を有する必要がある場合に設置される形態となります。駐在員事務所に認められている活動内容は、以下の事項です[ⅵ]

・連絡事務所機能の実行

・市場調査

・外国企業の投資又は事業協力の支援

 また、駐在員事務所の活動期間は5年間とされており、延長する場合には更新手続が必要となります。その他、以下の事項に関して留意が必要となります。

・駐在員事務所の所長は原則、ベトナム国内に居住しなければならないこと

・駐在員事務所の所長は他の法人の法的代表者を兼任することができないこと。

V. まとめ

 各形態について簡単にまとめると以下のようになります。
形態 法人格 特徴
現地法人 有限会社/株式会社/合名会社/個人企業/国営企業の5種類がある

*日本企業を含めた外国企業は、ほとんどの場合【有限会社】の形態で進出
駐在員事務所 調査業務/連絡業務がメインで営業活動は認められない
 ベトナムへ進出する際に、「現地法人」と「駐在員事務所」のどちらを選択すればいいのかという点については、現地の調査がある程度済んでおり、販路や取引先等の見通しも立っている状況であれば実際に営業活動を行うために「現地法人」の設立を進めていくのが一般的です。他方で、まだ調査が進んでいないような場合には「駐在員事務所」を設立し、ある程度見通しが立った段階で「現地法人」へシフトするのが、撤退等の万一の場合のことも考えると妥当な手法といえるのではないでしょうか。

 以上、「日本企業のベトナム進出(進出形態編)」でした。

 次回予定テーマは、「日本企業のベトナム進出(設立手続編)」です。お楽しみに!



 AGSでは、創設以来、多種多様な案件処理を通して、設立関係をはじめとした進出分野において豊富な知識とノウハウを蓄積しております。設立関連の手続でお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。



[ⅰ] JETRO(ベトナム):https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/basic_01.html

[ⅱ] 企業法No.68/2014/QH13第73条1項

[ⅲ] 日本の合名会社が無限責任社員のみで構成されているのに対し、ベトナムの合名会社で  は有限責任社員の存在も認められている。

[ⅳ] 企業法No.68/2014/QH13第57条1項

[ⅴ] 企業法No.68/2014/QH13第78条1項

[ⅵ] 政令No.07/2016/ND-CP

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