近時、ベトナム国会がある国会議員が二重国籍状態であるとして同議員の解任を賛成多数で決定したという報道がありました。2021 年 1 月 1 日より施行される国会組織法 No.65/2020/QH14 においても国会議員の基準としてベトナム国籍のみを有していることが追加されています(同法第 1 条 1 項)。
本稿では、これに関連し、日本国民とベトナム国民による結婚、出産の際の子の国籍の取得等について解説します。
1. 日本国民同士の結婚、出産の場合
この場合はベトナム法の適用は問題とならず、日本の国籍法に従って出生した子は日本国民となります (日本国籍法第 2 条 1 号)。
2. ベトナム国民同士の結婚、出産の場合
この場合は出生した場所がベトナム領域内外であるかにかかわらず、出生した子はベトナム国民となります(ベトナム国籍法 No.24/2008/QH12 第 15 条)。
3. 日本国民とベトナム国民の結婚、出産の場合
日本法によると、出生の時に父または母が日本国民であるときにその子は日本国民となります。
他方で、ベトナム国籍法によると、出生の時に父または母のいずれかがベトナム国民で、もう一方が外国の国民である場合、区級人民委員会への出生登録、出生証明書の申請時に書面により両親が合意すると子はベトナム国民となり、合意していなくてもベトナム領土内で出生したらベトナム国民となります(同法第 16 条 2 項、戸籍法第 36 条 1 項)。
そのため、ベトナムで出生した子は日本国民でもあり、ベトナム国民でもあるという二重国籍状態が生じ、出生時から 3 ヶ月以内に日本国籍の留保の意思表示をしなければ出生時に遡って日本国籍を喪失します(日本国籍法第 11 条 2 項、日本戸籍法第 104 条 1 項)。日本国籍留保の意思表示したとしても、本人が 22 歳に達するまでに国籍の選択、選択の宣言をしなければなりません(日本国籍法第 14 条 1 項)。な
お、20 歳以降に二重国籍状態になった日本国民はその状態になった時から 2 年以内に国籍の選択をします。
なお、ベトナムの国籍法の詳細を規定する政令 No.16/2020/ND-CP(2020 年 3 月 20 日施行)により、国籍法の規定する条件を満たしていること、ベトナムの建設・防衛に大きく貢献し、外国籍を維持しながらベトナム国籍を取得することがベトナムにとって有益であること、二重国籍が母国の法律に違反しないこと等の条件を満たす場合には、国家主席の承認のもとで例外的に二重国籍が許容されることになっています(同政令第 9 条)。
以上