2025年7月1日、政府は政令No.188/2025/ND-CP(以下「政令188」という)を公布し、2025年8月15日より施行されます。本政令は、医療保険法の施行に関する指針を定めた政令No.146/2018/ND-CP(以下「政令146」という)を改正するものです。以下に記載する更新内容は、政令第188/2025/ND-CPにおける新たな規定事項でございますので、ご参照ください。
1. 2025年7月1日以降における医薬品・医療機器購入時の直接給付について
政令No.188の第58条において、患者が自ら購入した場合に直接給付の対象となる医薬品および医療機器として以下が規定されております。すなわち、厚生大臣が定める希少医薬品のリストに記載された医薬品、および体外診断用医療機器を除くクラスCまたはクラスDの医療機器、個人専用の特殊医療機器、ならびに厚生大臣が公布する「通常の商取引が可能な医療機器リスト」に掲げられた医療機器が該当します。これらは、2021年11月8日付けの政令No.98/2021/ND-CP「医療機器管理に関する規定」、ならびに2023年3月3日付け政令No.07/2023/ND-CP、2025年1月1日付け政令No.04/2025/ND-CPによる改正を受けた規定に基づき、通常の商品と同様に購入・販売が認められます。従前の政令146においては、患者が自ら医薬品や医療機器を購入した場合の直接給付について、条件や範囲が明確に規定されておりませんでした。これに対し、政令No.188/2025/ND-CPは、給付原則、発生条件、給付水準を明確に規定し、透明性および実務上の実効性を確保する内容となっております。
政令188第59条に基づく直接給付の条件
“1. 直接給付を受けるためには、患者が以下の条件を満たす必要がある。
患者が処方または指示を受けた時点において、医療機関に政令本条第43条2項(b)に規定される医薬品または医療機器の在庫がなく、かつ以下のいずれかに該当する場合:
a) 医薬品について: 患者に処方された有効成分を含む市販医薬品が存在しない場合、または同一有効成分であっても濃度・含量・剤形・投与経路が異なり、代替処方が不可能な場合。
b) 医療機器について: 患者に使用を指示された医療機器が存在しない場合、または代替となる医療機器が存在しない場合。
2. 患者を他の医療機関へ搬送できない事情が存在する場合:
a) 患者の健康状態または疾病により、搬送が不可能と医学的に判断される場合。
b) 当該医療機関が感染症予防法令に基づき医療隔離の期間中である場合。
c) 患者が診療・治療を受けている医療機関が、当該省または中央直轄市において最も高次の専門的または高度技術的医療機関である場合。
3. 医薬品または医療機器を医療機関間で融通することが不可能な場合。
4. 処方または使用を指示された医薬品・医療機器は、当該医療機関の専門範囲に適合していること。
5. 処方または使用を指示された医薬品・医療機器は、医療保険加入者の給付対象範囲に含まれ、かつ全国のいずれかの医療機関において保険診療費として支払対象となっていること。”
2. 保険証未所持・未提示の場合の給付について
政令146においては、保険証を未所持、紛失、または情報に誤りがある場合、医療保険の給付審査が困難であるとされておりました。これに対し、政令188では、保険証を所持していない、または提示できない場合においても、給付の適用が認められる5つのケースを明確に規定してあります。適用対象となるケースは以下のとおりです。
- 6歳未満の児童で、保険証が未交付の場合。政令188第70条に基づき、2025年8月15日から効力を有する第37条2項において、6歳未満で保険証が未交付の児童であっても、出生証明書または出生届を提示することで医療保険診療を受けることができ、保険証を所持する者と同様の範囲で医療保険基金から給付を受けることができると規定されています。
- 再交付・交換・情報修正を待機中の者。第37条第3条において、保険証の再交付・交換・情報修正を待機している者は、社会保険機関が発行する受付票および身分証明書を提示することで医療保険診療を受けることができ、相応の権利に基づき給付が行われる旨が明記されています。
- 救急患者・意識喪失者または死亡者で、保険証を提示できない場合。政令188第70条に基づき、2025年7月1日から効力を有する第54条1条において、意識喪失、死亡、または緊急救命中により保険証を提示できない場合であっても、当該医療機関が医療保険加入状況を確認できた場合は給付を受けられるとされています。
- 保険証を紛失・破損・誤記載しているが、未修正の場合。同じく第54条第1条において、すでに医療保険に加入しているものの、保険証が紛失・破損、または情報に誤り・未更新の状態であっても、保険者番号の正当性が確認されれば給付を受けることができる旨が規定されています。
- 同じく第54条第1条において、すでに医療保険に加入しているものの、保険証が紛失・破損、または情報に誤り・未更新の状態であっても、保険者番号の正当性が確認されれば給付を受けることができる旨が規定されています。
第54条第1条においてさらに、国家予算による拠出対象者であり、医療保険加入者名簿に記載されているが保険証が未交付である者についても、社会保険機関の確認があれば診療費用の給付を受けることができると定められています。
* 〔確認および給付の条件〕
上記に該当する患者は、以下の条件を満たす必要があります。
身分証明書、出生証明書、受付票、その他確認可能な書類を提示すること。
医療機関および社会保険機関が有効な医療保険番号を確認できること。
給付は、それぞれの加入者区分に応じた医療保険給付水準に従って実施されます。
3. 民間組織・学校等に対する医療費給付に関する規定
従前の政令146においては、一次医療(初期的な健康管理)は主として公的機関・団体に適用されており、私立学校や企業などの非公的組織については、医療保険基金の利用に関する規定が明確ではありませんでした。これに対し、政令188第63条(2025年施行)においては、私立を含む教育機関、職業教育機関、各種組織、企業についても、一定の条件を満たす場合には、医療保険基金から一次医療のための経費支援を受けられることが明記されました。
医療法に基づき、一次医療を担当する専任または兼任の人員を配置していること。
応急処置や初期対応を行うための医務室、または専用の作業スペースを有していること。
同時に、社会保険機関と医療保険診療契約を締結している医療機関でないこと。
また、第63条の規定によれば、条件を満たす施設に対して医療保険基金から支出される費用には以下が含まれます。
必要医薬品、一般的な医療消耗品、初期救急処置用の機器の購入費用
学校保健活動に供する一般的な医療機器の購入・修理費用
疾病予防・感染症予防に関する広報資料の作成費用
医療業務を担当する人員に係る費用の一部および必要な医療機器の整備費用
これらの支出は、毎年度の計画に基づき策定され、保健省およびベトナム社会保険の定める基準・指導に従って実施されることが求められます。
4. 医療保険診療契約の締結に関する規定
政令188の新たな特徴として、従前の政令146では、医療保険に関する契約の締結・修正・補足について、特に医療機関の合併や名称変更などの場合に関する詳細な指針が存在しておりませんでした。これに対し、政令188第23条、第24条、第28条において、以下の新しい規定が明確化されております。
同一省または中央直轄市内に複数の医療機関を有する場合、医療保険機関と1件の医療保険診療契約を締結することも、各医療機関ごとに個別契約を締結することも可能とされています。他の省または中央直轄市に新たな医療機関を設置する場合、各医療機関は、所在地の医療保険機関と個別に医療保険診療契約を締結しなければなりません。契約履行の過程において、契約内容に関連する変更が発生した場合、当事者双方は契約付属書の締結手続きを行うものとされます。特に、医療機関または医療保険機関における名称、印章、口座、口座名義人の変更、専門技術レベルの変更、病床数の変更に伴う活動許可の調整、支払方法の変更が生じる場合には、契約付属書を締結する必要があります。医療機関および医療保険機関が合意のうえ、医療保険診療契約の有効期限満了後に新たに契約を締結する場合、新契約の発効日は旧契約の有効期間と連続するよう確保しなければなりません。
5. 経過規定 ― 医療保険診療データの認証は2026年1月1日より義務化
政令188/2025/ND-CP第69条第条によれば、2026年1月1日以降、医療保険診療費の支払いは、保健省およびベトナム社会保険が定める基準に従い、電子的に認証されたデータに対してのみ実施されることとなります。認証されていないデータについては、実際に診療サービスが提供された場合であっても、医療保険基金による支払対象外とみなされる可能性があります。データ認証の義務化は次を目的としています。架空請求や虚偽の診療記録作成による医療保険基金の不正利用を防止すること;診療費支払いの透明性および正確性を高めること従前の政令146には、支払い前にデータ認証を義務づける規定は存在していませんでした。また、政令188第69条第1項においては次のように規定されています。
「1. 本政令の施行日前に医療機関に入院し、本政令の施行日以降に診療を終了した場合には、手続および医療保険給付の権利について、本政令の規定または施行日前の規定のうち、患者にとって有利な方を適用するものとする。」
これにより、例えば患者が本政令施行日前(2025年8月15日以前)に入院し、施行日以降に治療を終えた場合には:
-手続および医療保険給付水準は、新旧いずれの規定であっても、患者にとってより有利な方が適用される。
-この規定はあくまで経過措置として適用されるものであり、2025年8月15日以前に治療を開始し、同日以降に終了するケースに限って適用される。
-患者自身が追加手続きを行う必要はなく、医療機関および社会保険機関が責任をもって、最も有利な方法を判断・適用する。
従前の政令146/2018/ND-CPには、制度移行期における患者利益を優先する旨の規定がなく、給付処理において多くの混乱や不都合が生じておりました。
6. 行政区画の合併に伴う国家予算による医療保険拠出対象者の給付に関する規定
行政区画の合併後、政令188において新たに追加された規定として、第69条第2条において以下のように定められています。すなわち、医療保険加入者が国家予算によって保険料を全額拠出または一部補助される対象として、政令施行日前に権限ある機関により認定されている場合には、行政区画の合併により加入区分が変更となっても、当該者は引き続き国家予算による拠出または補助を受けることができ、かつ従前の対象区分に基づく医療保険給付を享受できるものとされます。これは、当該認定文書の有効期間が満了するまで、または新たな文書により対象区分が再認定されるまで継続されます。
〔第69条第2項 抜粋〕「2. 本政令の施行日前に、権限ある機関により国家予算によって医療保険料を拠出または補助される対象と認定された者が、政治体制の機構改革に伴う行政単位の合併により対象区分の変更を受けた場合であっても、当該医療保険加入者は引き続き国家予算による拠出または補助を受けるとともに、権限ある機関が発行した文書に基づき認定された従前の対象区分に応じて給付を享受する。これは、当該文書の有効期限が満了するまで、または新たな文書により対象区分が再認定されるまで継続される。」
以上。