皆さん、こんにちは。本日は標題の件についてです。
2025年12月10日、ベトナム国会は新たな個人所得税法(第109/2025/QH15号、以下”改正PIT法”といいます)を正式に可決し、従来のPIT法を置き換えました。施行日:2026年7月1日となります。ただし、給与所得および事業所得に関する規定は、2026課税年度(2026年1月1日)から適用されます。
そちらの内容を紹介差し上げると共に、外資企業への影響が大きい部分については適宜コメントさせて頂きます。
1. 改正PIT法の目的
新PIT法は以下を目的としています:
従業員および個人事業者の税負担の軽減;
デジタル技術、半導体、人工知能等の重点分野における人材の誘致;及び
課税所得の範囲拡大および税務管理の強化による税収漏れの防止。
2. 給与所得に纏わる改正
1) 累進税率の簡素化
従来の7段階から5段階へと整理され、所得区分も引き上げられました。
| 月間課税所得 | 税率 |
|---|---|
| 1,000万VND以下 | 5% |
| 1,000万~3,000万VND | 10% |
| 3,000万~6,000万VND | 20% |
| 6,000万~1億VND | 30% |
| 1億VND超 | 35% |
この改正により、特に中間所得層の税負担軽減が期待されます。
2) 扶養控除の引き上げ
| 控除区分 | 旧制度 | 新制度 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 月額1,100万VND | 月額1,550万VND |
| 扶養控除 | 月額440万VND | 月額620万VND |
3) 非課税所得の拡大
新たに非課税とされる所得:
時間外・夜勤手当;及び
未消化有給休暇の支給金等。
4) 控除対象費用の拡大
一定条件の下、以下が控除可能:
医療費;
教育・研修費;
任意年金への拠出;及び
生命保険料(上限あり)。
当地給与所得が相応な方は、これらの控除により実質的に負担を軽減することが考えられます。こちらについては、適宜追報差し上げるようにします。
5) 小括
まず累進税率が7段階→5段階とされたことにより、ペイロール計算がより簡素化されることになります。企業としては、HR・給与計算の負担軽減や、計算ミスによる税務リスクを減らせることになります。
次に基礎控除が11mil→15.5milVNDに引き上げられたことにより、所謂中間層は手取り増を明確に感じられることになります。但し、HCM市やハノイ市等よりインフレによる生活費増にあえいでいる都市部については、もう少し基準を引き上げても良かったのではないかとは私見ながら思いますが。
また実務的には、時間外・夜勤手当の非課税化も、所謂中間層にとって恩恵の大きい部分と拝察されます。個人的には、任意年金の拠出や生命保険料等控除対象費用の拡大も興味深いところです。
3. 事業所得(個人事業者)に纏わる改正
1) 課税対象売上基準の引き上げ
旧制度:年2億VND
新制度:年5億VND
この基準未満はPIT非課税となります。
2) 売上ベースの税率
| 年間売上 | 税率 |
|---|---|
| 5億~30億VND | 15% |
| 30億~500億VND | 17% |
| 500億VND超 | 20% |
法人税率と整合する率となります。
3) 不動産賃貸の特例
個人による不動産賃貸(事業者を除く)について、売上に対して一律5%課税されることになります。
4. 課税及び非課税所得の拡大
1) 課税所得
EC・デジタルプラットフォーム収入;
「.vn」ドメイン名の譲渡;
カーボンクレジットの譲渡;
当選車両ナンバーの譲渡;
デジタル資産・金地金の譲渡;及び
デジタル技術・スキル関連権利の譲渡。
デジタル経済の新たな所得捕捉を反映する改正と言えます。
2) 非課税所得
農林水産業・塩生産の所得;
カーボンクレジット・グリーンボンド所得;及び
スタートアップ投資家・専門家の所得等。
3) 小括
課税所得は、所謂デジタル課税ですが、税務当局としてそのような所得をどのように捕捉するかという論点は残るところです。
銀行データ連携やプラットフォーム源泉徴収、電子インボイス連動等による管理強化を見据えた改正と解されます。
4. その他所得の税率
| 所得区分 | 税率 |
|---|---|
| 投資所得 | 5% |
| 資本譲渡 | 利益の20%または譲渡額の2% |
| 証券譲渡 | 0.1% |
| 不動産譲渡 | 2% |
| 宝くじ等 | 10%(2,000万VND超) |
| 保険収入 | 5% |
| ロイヤルティ・フランチャイズ | 5% |
| 相続・贈与 | 10%(2,000万VND超) |
| デジタル資産・金 | 0.1% |
5. おわりに
冒頭の通り、今回の改正は給与所得者や個人事業主の手取りを増やす方向です。そちらのみだとポジティブに見えますが、所謂デジタル課税については、捕捉強化等税務当局として積極的に対応してくることが予想されます。
当社では会計税務周りの法令についても、順次updateを差し上げております。法令実務周りのコンサルティングをご要望であれば、お気軽にinfo@ags-vn.comまでご連絡下さい。
ではまた。