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政令第85/2026/ND-CPに基づく任意追加年金保険への参加手続(2026年5月10日より適用)


1. はじめに
皆さん、こんにちは。AGSスタッフです。本日は、標題の件についてです。
過去のupdateで、個人所得税(PIT)に関する控除対象費用の拡大について触れました(2.(4)号参照。当社ウェブサイトの別頁に遷移します):
ベトナム個人所得税(PIT)法2025の主な改正概要 – AGS(AGS JOINT STOCK COMPANY)
本件は、そちらの一環という文脈になります。
2026年3月25日、政府は追加年金保険に関する政令第85/2026/ND-CP(以下”本政令”といいます)を公布しました。本政令は2026年5月10日より施行され、政令第88/2016/ND-CP(以下”旧政令”といいます)に代わるものです。また、本政令は社会保険法2024第127条第3項の詳細を定め、従業員に対して強制社会保険に基づく年金制度を補完する形で、任意の老後所得積立手段を提供することを目的としています。本政令は2026年5月10日より施行されます。旧政令に基づく既存の任意追加年金プログラムは、新制度に従って移行および段階的に調整されます。
追加年金保険は任意であり、強制ではなく、採用や労働契約締結の条件として用いてはなりません。以下は、本政令第6条に基づく詳細な参加手続です。

2. 対象者
社会保険法第2条に基づき強制社会保険に参加している従業員および使用者が対象となります。
参加は任意であり、当事者間の平等かつ合意に基づいて行われます。

3. 参加手続(4つの主要ステップ)
ステップ1:使用者と従業員間の書面合意の作成および締結
使用者は書面による合意書を作成し、従業員に通知および意見聴取を行います。合意に至った場合、当事者は以下のいずれかの方法で締結を行います:
– 各従業員と個別に直接締結する方法、または
– 従業員集団の意見を収集した上で、労働組合委員長と締結する方法
当該合意は、任意性、平等性、誠実性、協力および信義に基づかなければなりません。合意書の基本的内容は、本政令に添付された附録IIに従うものとされており(参加プログラム、各当事者の拠出額、拠出頻度、使用者拠出分の受給条件、当事者の権利義務等を含みます)。

ステップ2:年金基金運用会社との契約締結
使用者は、財務省の認可を受けた年金基金運用会社と、追加年金保険プログラムへの参加契約を締結します。参加従業員のリストに基づき、当該運用会社は各従業員ごとに個別退職口座を開設します。

ステップ3:基金への拠出
登録されたプログラムおよび書面合意に基づき:
– 使用者は自己負担分を拠出します(該当する場合)
– 従業員の代理として拠出を行います(委任がある場合)
– 各従業員ごとの拠出額を基金運用会社に通知します

ステップ4:個別退職口座への配分
以下の金額が従業員の個別退職口座に計上されます:
– 使用者の拠出金(該当する場合)
– 従業員の拠出金(該当する場合)
個別退職口座は従業員の所有とされます。ただし、使用者の拠出分については、合意された条件(通常は最長5年を超えない最低勤務期間)を満たした場合に限り、完全に従業員に帰属します。

4.使用者拠出分および投資収益の受給条件
従業員は、以下の場合に使用者拠出分および投資収益を受け取る権利を有します:
– 合意書に定める最低勤務期間(5年を超えない)を満たした場合、または
– 不可抗力事由に該当する場合(死亡、重篤な疾病〔がん、麻痺、非代償性肝硬変、重度結核、エイズ等〕、労働能力喪失率81%以上または重度障害、外国人労働者がベトナムでの居住を終了した場合、または労働許可証が更新されずに失効した場合)

5. 留意事項
1) 税制優遇:

使用者の拠出金は法人所得税上の損金として扱われ、従業員の拠出金は個人所得税上の課税所得から控除されます(税法の規定に従います)。

2) リスク:
本制度は市場ベースの商品であり、国家は投資収益や給付水準を保証しません。従業員は参加前に開示資料を十分に確認し、投資方針およびリスクを理解する必要があります。

3) 給付方法:
従業員は退職時に、一時金、月次給付、またはその組合せにより給付を受けることができます。退職年齢前の引出しには(最大5%の)手数料が課される場合があります(不可抗力事由を除く)。

4) 情報開示義務:
基金運用会社は、リスクに関する警告を含め、情報を十分に開示しなければなりません。

6. おわりに
本政令は、当地実務上全く存在感のない、所謂企業年金制度の導入を後押しする趣旨と解されます。
確かに、税務メリットや有用人材の引き留め、福利厚生の高度化等の観点からは、特に人材流出に悩む日系企業にとっては一考に値する選択肢にはなり得るところです。
他方、第3項の4つのステップを見ると、書面合意や個別設計等、かなり面倒なようにも思われます。
加えて、労働者が元本保証と誤認していたりすると、後日の争訟リスクも孕み得るところで、説明書類やリスクに関する同意取得をどうするのか等、引き続き論点はかなり残っていると言わざるを得ません。
ファンド運用会社の選定もカギとなりますが、当地の銀行員等金融サービス提供者がどれほど応答する金融知識を有しているかという点についても疑問があり、仮に導入を企図するのであれば、論点の十全な洗い出しと、例えば日本本社のそれをモデルにしつつも当地法令及び実務並びに実情に則した(即した)慎重な準備が求められるところです。
とはいえ労働者、とりわけベトナム人の福利厚生に資する制度であることは明らかであり、特に大企業等財務的な余力も知識も、そして上記各論点を集約し逐次解決できるような人材も有しているところから、いわばトップダウンでも、個人的には進んでいってもらいたいところです。
当社では法務労務周りのコンサルティングを幅広に提供しております。本件に纏わる制度設計のお手伝いも可能ですので、そのような需要があれば是非info@ags-vn.comまでご連絡下さい。ではまた。

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