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【法務部ニュース】ベトナム人労働者によるストライキ

Go-Viet 運転手 100 人がストライキ、ボーナス制度変更に抗議

https://www.viet-jo.com/news/social/190718182728.html

インドネシア系配車サービス「Go-Viet(ゴーベト)」の本社前で 18 日朝、同社の運転手ら約 100 人が ストライキを行った。このストライキは、17 日 0 時から変更されたボーナス制度に抗議するもの。

Q.ベトナムの法令上、ストライキとはどういった行為を指しますか?

A.ストライキとは、労働争議の解決過程において要求の達成を目的とする労働組合が、一時的、自主的及び 組織的に行う休業行為を意味し、利益に関する団体労働争議の場合で、労働仲裁委員会による調停文書/不 調停文書の作成後一定期間経過後にのみ実施することが認められています(労働法 No.10/2012/QH13 第 209 条 1 項・2 項)。

この労働法上の規定からでも、①労働争議の解決過程であること(手続)、②労働組合が実施すること(主体)、 ③利益に関する団体労働争議であること(目的)、④調停文書/不調停文書の作成後(開始時期)といったストラ イキの正当性が認められるための要件を読み取ることはできます。

①の手続については以下の質問への回答で詳しく説明しますが、②主体については会社内の労働組合がス トライキを組織及び指導することとされており、会社内に労働組合が設立されていないところにおいてはその地 域を管轄する上部労働組合が労働者の要請に基づいて実施します(労働法第 210 条 1 項・2 項)。そのため、労働組合に加入していない 者達が結集して独自に行う休業行為は、ベトナム法令上のストライキの要件には該当せず、違法ストライキであ るとされています。

③の目的に関して、「利益に関する団体労働争議」とは、労働組合と会社の交渉過程において、労働組合が 労働に関する法律、集団労働協約、就業規則その他の合法的な規則や合意の規定に対し、新たな労働条件 の確立を要求することから発生する労働争議を指します。労働者としての新たな権利、利益、福利厚生、補償 等を求めて行う場合にはこの目的に合致しますが、既存の労働契約に基づく使用者としての義務の履行を求 める場合には該当しません(労働法第 3 条 9 項。労働契約の義務の履行を求める争議は、労働に関する法律、集団労働協約、就業規則、その他の 合法的な規則や合意の規定の解釈と履行が異なることから発生する労働争議(「権利に関する団体労働争議」)に該当し ます。)。

Q.ストライキはどういった手続で行われますか?

A.労働組合によるストライキの手続は以下のようになっています(労働法第 211 条ないし第 213 条)。なお、上記 A にあるように、会社内に労働 組合が設立されていない場合には上部労働組合が主導的にこのストライキに至るまでの手続を行います。

1.会社に対する、意見聴取の時間と形式に関する 1 日前までの通知。

2.労働組合による、労働組合執行部及び生産グループリーダーに対する執行部の案、ストライキへの賛 否に関する意見聴取。

3.(意見の 50%超がストライキに賛成の場合)労働組合執行部によるストライキの決定。

4.労働組合執行部による、ストライキ開始前の少なくとも 5 営業日前までの、会社に対するストライキ決定 書の送付。省級労働局、省級労働連盟にもそれぞれ 1 部ずつ決定書を送付。

5.労働組合の要求が記載されて決定書を受け取った会社が、ストライキ開始日時までにその要求を受け 入れない場合のストライキの実施。

Q.違法はストライキはどういったものですか?それは誰が認定しますか?

A.以下のものが違法なストライキに該当します。これまで適法なストライキの要件、ストライキ実施の手続につ いて説明をしてきましたので、これらに反するものは違法なストライキとなりえます。

– 労働者の利益に関する団体労働争議以外から発生するストライキ

→ 新たな労働条件の確立を求める「利益」に関する団体労働?であることがポイントになります(上記 ③)。

– 同じ会社の下で共に就労していない労働者のために行われるストライキ

→ あくまでも自分達の新たな労働条件の確立、労働環境の改善を目的として実施されるべきであり、 それに直結しない他の会社で就労する労働者のためのストライキは認められていないということに なります(上記③)

– 団体労働争議に対し、法令に基づく解決が試みられていない、又は解決の過程にある時点でのストラ イキ

→ 労働調停員、労働仲裁委員会による調停手続が団体労働争議の解決方法として先行しなければ なりません(上記④)。

– 政府が指定したリストに基づき、ストライキが禁止されている企業において実施されるストライキ

→ 上記①から④を満たしていたとしても、国防、公共安全等の国家経済、治安及び国民生活の維持 に不可欠な事業を行っている企業がストライキを実施すると当該企業だけではなく国家公益、国民 の生活に根本的、重大な影響を与えかねないという政策的判断によるものになります。

– ストライキの延期又は停止に関する決定があったストライキ

→ 省級人民委員会の委員長は、ストライキが国民経済、公益に重大な損害を及ぼすと判断する場合 には、当該ストライキの延期、停止を決定することができます(労働法第 221 条)。これも公益的、政策的観点からスト ライキの実施を制限するものになります。

あるストライキが適法なストライキか、違法なストライキかを判断する決定権限は、ストライキが発生した省級の 人民裁判所にあり、裁判官から構成される合法性審査評議会がその判断をします(労働法第 225 条、第 226 条)。

Q.違法なストライキが行われた場合、会社としてはどのような対応をすべきですか?

A.会社がストライキが上記 1 から 5 の手続にのっとっていないストライキの先導を発見した場合には、郡級人 民委員会の委員長、その省に属する市区町村の労働連盟等に通知しなければなりません。

その通知をもって労働局、省級人民委員会等が適切な手続過程を踏んだストライキであるか否かの調査を行 います。この調査によって違法なストライキであると判断された場合には、省級人民委員会の委員長はその旨 の決定を公布し、その後は市区町村の労働連盟等と共に労使双方の意見を聞いて解決に向けた支援の指導 がなされます。会社からの通知受領後の調査の指導から最終的な解決に向けた支援の指導は合計5日間以 内に行われることになっており、行政機関、上部労働組合等による迅速な解決対応が予定されています(労働法第 222 条 1 項・2 項、政令 No.05/2015/ND-CP 第 35 条 1 項・2 項)。

緊急性があり迅速な対応が求められる場合には上記の手続が適していますが、その他、人民裁判所に対し て合法性審査を要求するという対応も選択肢としてあります(労働法第 223 条 1 項)。

Q.ストライキが行われている間、会社は労働者に対して賃金を支払わなければなりませんか?

A.その労働者がストライキに参加しているか否かによって異なります(労働法第 218 条 1 項・2 項、第 98 条 2 項 4)。

ストライキに参加している労働者に対しては、労使双方で別途合意がある場合を除いて、賃金の支払いを する義務はありません。自らストライキに参加して休業している以上、労働の対価である賃金の支払いは受けら れないというノーワーク・ノーペイの原則が貫かれています。

他方、ストライキに参加しておらず、ストライキを原因として休業しなければならない労働者に対しては、地域 別最低賃金を上回る労使双方が合意した水準での賃金の支払いをしなければなりません。

Q.ベトナムでは 1 年間に何件くらいストライキが発生していますか?

A.労働傷病兵社会問題省の統計に基づいたあるニュースによると10、ストライキは 2015 年 245 件、2016 年 242 年、2017 年 314 件、2018 年 214 件、発生しています。このうちの多くは違法なストライキとされています。

Q.最近発生した大規模なストライキはどういった原因で発生しましたか?

A.今回のニュースを含め報道されたストライキの一例として以下のものがあります。

会社名 概要 発生原因/労働者の要求
1 Go-Viet (インドネシア系配 車サービス会社) 2019 年 7 月 18 日、ホーチミン市内 で同社で勤務する運転手ら約 100 名がストライキを実施した。 運転手への得点によるボーナス制 度の変更。
2 地場タクシー会社 数社 2018 年 11 月 4 日、ダナン国際空港 においてタクシー会社 8 社の運転手 がタクシー乗り場への車寄せを拒否 する対応でストライキを実施した。タク シー各社が運転手に営業再開を指 導し、30 分間ほどのストライキ後に通 常営業に戻った。 空港内で営業する配車会社 Grab の登録車両、白タクにより空港乗入 れの登録料に見合う乗客の獲得が できないことに対する不満。
3 IVORY VIETNAM COMPANY LIMITED(韓国系 アパレル製造会社) 2018 年 10 月 18 日、Thanh Hoa 省 の同社工場において 3000 名を超え る労働者が 5 日間以上に渡りストライ キを実施した。Thanh Hoa 省労働連 盟は秩序維持、早期解決のため地 域当局と協力し、労働者と会議を開 催したが不調に終わる。その後、会 社は昼食手当を 14,000VND から15,000VND に増額し、ボーナスを 100,000VND~200,000VND 増額 し、時間外労働規制を遵守すること を誓約した。 ボーナスの低さ、昼食の価格の高さ に対する不満。 継続勤務の労働者と新規採用の労 働者との間の賃金差が少ないことに 対する不満。 残業が多く、時間外労働規制に従 った対応をしていないことに対する 不満。

以上

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