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ベトナム自動車産業とTPPによる市場動向予想【2015.11】

1, 調査目的

-日本において自動車産業はリーディング産業であるが、国内市場が縮小してきている昨今において海外マーケット開拓・シェア獲得は必至である。

-ベトナムは人口9,200万人を超えており、豊富な労働人口や高い経済成長率で注目の市場であり、平均年齢28歳のこの国は将来的に大きなポテンシャルを持つ国である。その潜在市場が自動車市場にどの様に影響して行くのか。また、TPP実施を目前に控えTPP実施によりどの様な影響が自動車産業にもたらされるのか。

-それらを導き出す為にミニ調査を行い、市場の動向予測を立て、自動車産業だけでなく、それに関わるベトナム裾野産業にも興味がある日系企業のベトナム進出に僅かでも役に立つ情報提供を目的にミニ調査開始。

 

2, 調査方法

-インターネットで各機関Website、資料等での情報収集、聞き取り

-アンケート調査はホーチミン市1区の中心地オフィス街で実施


3, 結果

-情報をまとめ精査し結果を導き出す


4, 分析

-結果から今後の市場予測を実施


5,   まとめ

~ベトナムの車事情~
まず、ベトナムで車を購入すると日本の3倍のお金を払わないと乗れないという

購入者を悩ませる重税がある。



【例】日本の大衆車であるTOYOTAカローラをベトナムで買うと

日本の3倍程の値段の高級車になる

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その上、公共交通機関もまだまだ整備されておらず、国民の5人に2人以上がバイクを保有し

人口9,200万人でバイク台数は3,700万台以上と言われている。

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~ベトナムの自動車販売数~
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-上記2014年のデータの通り、近隣国のタイやインドネシアと比べると、ベトナム自動車マーケットは10分の1程である事が伺える。

現時点でベトナムは人口9,200万人を超えてきており、ポテンシャルがある魅力的な市場だが、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンに次ぐASEAN5番目の市場と言われており、ベトナムでは数々の重税で車は一部の富裕層しか購入出来ないでいる。

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【上記のグラフはベトナム国内の各自動車メーカーのシェア獲得率である】



ご覧の通り、TOYOTAを筆頭に日系各社が健闘している様に伺えるが、タイ、インドネシアでの日系メーカーのシェア獲得率はベトナムでのそれと比べると下記グラフの通りである。

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つまりは、ベトナムでのシェア獲得率はタイ、インドネシアと比べると圧倒的に低いと同時に、各メーカーにとっては今後のシェア獲得の伸びしろの大きさも伺える。
~アンケート調査結果~
-回答人数 【74人】

-平均年齢 【23歳】

-主な職業 【オフィスワーカー】

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 質問 -【自動車市場が拡大すると更なる渋滞が懸念されるが、どう思いますか?】
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以上のアンケート結果から見ると、以外にHONDA車が人気なのは、バイクと言えばHONDAのベトナムにおいて知名度が高く、その知名度がそのまま一般層の欲しいメーカーの数字に現れたと推測すると同時に、これは新興国市場において一般層へのブランディングの重要性が現れた数値と推測する。

また、車は欲しいが、渋滞が深刻なホーチミン市内において今後、車両台数が増えると空気汚染、渋滞悪化等のネガティブ要素が目立ち、アンケート結果から見て取れる様に知名度の高い高級ドイツ車等の車自体への憧れは強いが、まだまだ平均的なオフィスワーカーが購入するのは、様々な面においてまだまだ難しい状況であると伺える。
  ~自動車の関税ゼロへ~
 

-【TPP】とは、「 Trans – Pacific Strategic Economic Partnership Agreement 」の略で、日本語では「環太平洋戦略的経済連携協定」と言う。

現地生産された自動車のうち、どれだけの部品を現地で調達したかの割合、原産地規則は55%に設定。これを満たせば関税ゼロとなり、排気量3,000cc以上に対して70%の関税だったのを10年かけて撤廃する。 だが、2016年7月からベトナム政府はこれらの3,000cc以上の乗用車に向けた特別消費税率を現行の一律60%から90%~150%(排気量によって異なる)へと大幅に引き上げようとしている。

したがって、関税の削減ペース次第では、特別消費税の引き上げを受け、従来よりもこれらの乗用車の価格が上昇するケースもあり得る。

一方、ベトナム政府が産業育成に注力する排気量が2,000cc以下の乗用車を対象とした特別消費税率は、2016年6月から2019年にかけて45%から20%~30%(排気量によって異なる)へと段階的に引き下げられる予定である。

背景には、外資系自動車メーカーに対し、ベトナムがこれらの乗用車の販売先として有望マーケットだと認識させて、進出を促そうとするベトナム政府の思惑があったかもしれないが、ベトナム政府の不透明で矛盾した自動車産業政策、タイやインドネシアのような優遇政策等の積極的な市場拡大の動きも無く、各メーカーは将来の戦略プランが立てにくいと言われる。
 ~車の組み立て・パーツ~
 裾野産業が弱いベトナムでは自動車産業の現地調達率が非常に低い為「90%~95%が輸入」パーツを輸入に頼らざるを得なく、高コストとなる為に2018年のTPP施行後はベトナムで自動車生産をするメリットが無くなる。

その為、今後も経済成長やTPPにより販売台数は増えるが輸入車に頼らざるを得なく、自動車国内生産数はさらに低くなるだろう。

今後、自動車国内生産率を上げるうえで欠かせないのが自動車パーツ等を生み出す裾野産業であるが、外資が裾野産業に投資し裾野産業を育てないと現地調達率は上がらないのは目に見えており、ベトナム政府も投資誘致をしているが、実態はインフラも満足に整っておらず裾野産業に対する税金面等での優遇策も無いので外資の投資先としてはインフラも整っており、優遇政策もあるタイやインドネシア、マレーシアに目が向いてしまうので厳しい状況と言えるだろう。

TPP施行後はタイで生産した低コスト完成車をベトナムへ無関税で輸出し、各メーカーはベトナム国内での自動車生産から撤退もしくは縮小する動きが加速するとみられる。
~まとめ~
ベトナムはまだまだ自動車産業発展途上国で今後市場が大きく拡大するには今後の人口増加と共に更なる経済発展と政府の優遇政策等が機能して、外資が投資し裾野産業が育ってようやく本格的な市場が出来上がるとみられる。

したがって現段階でTPP施行後すぐに自動車市場が急拡大するとは考えにくい。

またベトナム輸入中古車市場については、TPP初年度に66台受け入れ、その後段階的に施工後16年までに150台受け入れと増えていくが市場と呼べる規模に無く基本的にTPP施行後も輸入中古車市場は当分出来上がらないと予想する。

ベトナムの今後の自動車産業の拡大にはベトナム政府の明確な政策と迅速な対応が鍵となるだろう。

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