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【ブログ】リーガルインターン追住(おいずみ)のインターン記⑩〜試用期間〜



こんにちは。AGSリーガルインターンの追住です。



前回に引き続き、



前回はこちら



使用者が試用期間結果の事前通知を怠り、試用期間終了後も労働者が勤務し続けている場合において、使用者と労働者との間に、いかなる法律関係が成立するか。労働契約の成否及び成立する契約の種類について検討します。



労働契約の成否について

この点、使用者及び労働者間に労働契約関係は成立しないと解する立場が考えられます(A説)。この見解は、①労働法が試用契約と労働契約を区別していること、②労働契約締結について当事者間の文書による明示的な合意がないこと等を理由とするものと考えられます。

これに対して、労働契約が当然に成立すると解する立場も考えられます(B説)

この見解は、①試用期間後も労働者が勤務し続けている場合、雇用継続に対する労働者の信頼及び合理的意思が認められること、②かかる場合は通常「試用期間での業務が満足なものであった」(労働法29条1項) に当たると考えられ、同項に基づく労働契約締結義務が使用者に認められること等を理由とするものと考えられます。

旧法令下では、Decree(政令)により、労働者が試用期間結果の通知を受けずに勤務し続けている場合には当然に労働契約が成立する旨定められていました。しかし、上述のように現法令にはかかる規定が設けられていません。

労働法改正の際に、あえて当該規定が除外されたと解するか、又は当然のものとして規定が設けられなかったに過ぎないと解するかによっても、上記A説及びB説に見解が分かれるでしょう。

私個人の見解としては、B説が妥当だと考えます。

試用期間は、使用者にとっては労働者の適格性等を見極めることができる一方、労働者にとっても労働環境を見極めることができる点で有益なものです。また試用期間後の労働法29条1項に基づく労働契約締結義務は、同項の文理上、使用者にのみ認められると解釈されるため、労働者としては、試用期間中の実際の労働環境等に不満がなかった場合でも、より良い条件の雇用先が見つかれば試用期間後の労働契約締結に応じることなく、試用期間後直ちに勤務を終了することができるものと考えられます。とすれば、労働者が試用期間後も勤務し続けている場合には、当該使用者のもとでの雇用継続の合理的意思が労働者に認められるといえるでしょう。

また、試用期間中の労働者の業務に問題がある場合、使用者は直ちに試用契約を取消し(労働法29条2項)、労働者の勤務を停止させることができることから、試用期間後も労働者が継続して勤務している状況を使用者が放置しているのであれば、過去及び現在において労働者の業務に問題がないことが推認されます。その結果、労働者の「試用期間での業務が満足なものであった」(労働法29条1項)として、同項に基づく労働契約締結義務が使用者に認められるため、労働契約の成立を認めることは当然の帰結だといえます。使用者としては、試用期間結果を事前通知し、試用期間後、労働者の勤務を終了させれば、労働法29条1項の反対解釈により、満足な業務を提供しない非適格者との労働契約締結義務は課せられないため、上記帰結は使用者にとって酷なものともならないと考えられます。

そして労働法全体を通じて労働者保護が図られているため、法令解釈は労働者に有利に行うことが大原則です。

以上より、B説が妥当だと考えます。

なお、上記見解は所轄当局等の最終的な見解を保証するものではないことはご留意下さい。

上記の通り見解は分かれるところですが、試用期間終了後労働契約を作成しなくても労働契約が成立したと解される余地は十分あるため、期間の管理には十分ご留意下さい。

成立する労働契約の種類について、次回に続きます。



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