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【ブログ】リーガルインターン追住(おいずみ)のインターン記⑪〜試用期間〜



こんにちは。AGSリーガルインターンの追住です。



前回に引き続き、



前回はこちら



使用者が試用期間結果の事前通知を怠り、試用期間終了後も労働者が勤務し続けている場合において、使用者と労働者との間に成立する労働契約の種類について検討します。



B説(上記場合に労働契約が当然に成立すると解する立場)に従った場合、次に、成立する契約の種類が問題となります。

この点、旧法令下のDecreeその他下位法令においても、成立する労働契約の種類については規定されていませんでした。

考えられる見解としては、常に無期限労働契約が成立すると解する説(B-1説)、常に有期限労働契約が成立すると解する説(B-2説)、労働法22条2項を応用し、特定業務の履行を目的とする場合に24ヶ月の有期限労働契約が成立し、それ以外の場合は無期限労働契約が成立すると解する説(B-3説)等が挙げられます。



私個人の見解としては、B-1説が妥当だと考えます。

成立する契約の種類については、有期限労働契約満了後も労働者が勤務し続けている場合について定める労働法22条2項が参考となります。同項によると、季節的業務又は特定業務の履行を目的とする12ヶ月未満の有期限労働契約については24ヶ月の有期限労働契約の成立が、それ以外の有期限労働契約については無期限労働契約の成立がそれぞれ擬制される旨規定しています。

しかし前回もご紹介したように、季節的業務の履行を目的とする場合、そもそも試用契約は認められないため、同項をそのまま試用期間後の労働契約について準用することはできません。

そこで季節的業務を除いた形での同項の応用可能性を探るところ、法令解釈は労働者に有利に行うという大原則からすれば、B-3説ではなく、安定的な雇用を受けられる無期限労働契約の成立を認めるべき(B-1説)です。

これに対して、特定業務の履行を目的とする12ヶ月未満の有期限労働契約の締結を予定した試用契約の場合、使用者及び労働者ともに、将来における長期の労働契約を予定しておらず、一律に無期限労働契約を成立させることは、使用者だけでなく労働者の合理的意思にも反するおそれがあるとの批判がなされることが考えられます。

しかし、無期限労働契約を成立させたとしても、労働者は45日の事前通告によりいつでも一方的に労働契約を解除できるため、労働者に特段の不都合はないと考えられます。むしろ有期限労働契約を成立させた場合(B-2説及びB-3説による場合)、労働者に認められる一方的な解除権の行使は労働法上限定されており(労働法37条1項、2項参照)、長期の労働契約を予定しない労働者にとっても、より有利な法令解釈としては、無期限労働契約の成立を認めることであると考えられます。

次に、常に無期限労働契約の成立を認めることは労働法22条2項の場合との均衡を失し、過度に労働者を保護することになり、当事者の公平を害するとの批判も考えられます。

しかし、同項では両当事者、つまり労働者にも有期限労働契約満了後の新たな労働契約締結義務が課せられることを前提としているのに対し、試用契約後の労働契約締結義務は上述のように使用者のみに課せられると解されます。そのため、当該義務に違反する同項の労働者の要保護性は、何らの義務に違反していない試用期間終了後継続勤務する労働者の要保護性とは異なり、前者は後者に及ばないと解され、常に無期限労働契約の成立を認めたとしても同項との均衡を失するとまではいえないと反論できると考えられます。

なお、上記見解は所轄当局等の最終的な見解を保証するものではないことはご留意下さい。



以上の議論は使用者が試用期間結果の事前通知を怠った場合を前提としています。

そのため、使用者が労働契約締結を行わない旨の事前通知を行ったにもかかわらず労働者が試用期間後も継続勤務し、使用者がかかる状況を放置している場合については別途考察が必要となると思われます。

また、試用期間満了後どの程度の期間労働者が勤務し続ければ無期限労働契約の成立が認められるのかについては、試用期間満了日の翌日に出勤さえすれば直ちに無期限労働契約が成立すると考えることは不合理と思われるため、労働法22条2項との均衡も含めて別途検討が必要です。



いずれに致しましても、早急な法令整備が求められる論点であり、使用者となる日系企業様におかれましては、このような労働契約の成否をめぐる紛争を事前に防止することこそが必要ではないでしょうか。

そのためにも、専門家の関与の下、法務、労務、コンプライアンス体制の整備、充実を図ることが求められます。



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