みなさんこんにちは。
AGSホーチミン事務所の閑野です。
つい先日、カフェでコーヒーを飲みながら新聞を開いてみると、ベトナム中部の工場で労働者1,000人が大規模なストライキを行った、という記事が大々的に掲載されていました。
この国にいると頻繁にストライキの話を耳にします。その度に、この国が労働者を主体とする社会主義国なのだとしみじみと実感します。
ベトナム政府が公表している統計では、2014年に発生したストライキの件数は293件。年度は異なりますが、2011年に57件しか発生していない日本と比べるとその件数の多さには驚愕です。
JILAF(国際労働財団)によれば、2009年~2014年までに発生したストライキの数はなんと3,104件。その内訳は、約75%に当たる2,300件ほどが外資系企業に、約24%にあたる750件ほどが現地民間企業に、約0.3%にあたる90件ほどが国営企業に対するストライキだったと言います。
この中でも、やはり特筆すべきは外資系企業に対するストライキの件数です。
この対象となる外資系企業を国別に分類すると、台湾企業が24.5%、韓国企業が24.4%とこの2カ国だけで半分を占めていることがわかりました。ちなみに日本は6.6%と非常に少ない数字を出しており、現地スタッフとも良好な関係を築けていることが伺えます。
※ジェトロの2014年の資料によると、ベトナムに進出している韓国企業は2799社、日本企業は1213社となっている。台湾企業は詳細が不明。
ストライキの原因
実際にストライキを行う労働者は何が不満で企業に交渉を迫るのでしょうか。韓国の企業人権ネットワークが公表した在越韓国企業の実態レポートによると、
- 1日にトイレに行ける回数が決まっており、それ以外の時間にトイレに行くと減給処分を科せられる。しかも、1,000人規模の工場にもかかわらずトイレの数が10個しかない。
- 生産量が平均量よりも下回ると、社員全員を残して身体検査を行う。
- 女性の新入社員に対して「今後3年間は妊娠をしない」といった誓約書を書かせる。
- 賃金を一切払わず、未払いのままベトナムから撤退する。
- 契約時の給与を支給せず、退職金も一切払わない。
- 社員食堂が不衛生でまずい。
トイレと食事には気をつけろ
金銭問題はさておき、今回の調査の中で特に興味深かったのが「トイレ」と「食事」がストライキの原因となっている点です。工場側がトイレの使用を制限する主な理由は「製造ライン」に穴が開く事を嫌うからだそうです。確かに、いきなり手作業のラインで人がいなくなれば、その後の作業はストップせざるを得ません。しかし、普通の工場はそのための補助要員も常に備えており、常にラインをノンストップで操業できる体制をとっているというので、工場側に非がある。と労働者達は主張しています。
また、「トイレ」と同じく興味深いのが「食事」です。ベトナムの工場は基本的に近辺に店が無い遠隔地に多く、工場で支給される食事以外に選択肢が無いようです。しかも、ベトナム人は特に健康意識が強いため、支給される食事が「まずい」「栄養価が低い」「不衛生」ものであれば、それは彼らにとって死活問題なのです。
日系企業
幸いにも、「賃金の低さ」で訴えられる事はあれど、「労働環境の悪さ」で糾弾をされた日系工場は今のところは確認されていません。逆に、「労働環境の良さ」という意味では高く評価され、労働者達に人気があるという噂を聞いたことがあります。話はそれますが、その一端を担っているのが実は日本の大手カラオケ会社のシダックスなのです。同社は日本で培った50年以上の給食産業での経験を活かし、在越日系工場の社員食堂などを運営しているようです。1日に調理する食事は5万食にも昇るそうです。
今後も外資企業のベトナム進出は続き、より多くの工場が設立されることが予想されます。文化も風習も違う人々が共に働くため、そこには必ず軋轢が生まれるでしょうが、お互いがお互いを理解しあうことでより良い関係を築き上げてほしいですね。
今回は以上になります。それでは。 ヘンガップライ