みなさんこんにちは。
AGSホーチミン事務所の閑野です。
突然ですが、
カシューナッツ、キャッサバ(タピオカの原料)、米、コーヒー、コショウ、天然ゴム
これらに共通しているものが何かわかりますか?
実はこれらの農作物は「ベトナムでの生産が非常に盛ん」という共通点を持っています。
カシューナッツ 1位 (2015年)
コショウ 1位 (2015年)
米 2位 (2013年)
キャッサバ 2位 (2013年)
コーヒー 2位 (2014年)
天然ゴム 2位 (2013年)
※ベトナムの農産物の生産と流通(国際農林水産省研究センター(JIRCAS))
となっております。もちろん、その他の作物も軒並み生産性が非常に高く、国内の食料自給率は脅威の117%となっています。(ちなみに日本は28%ほど)※農林水産省 食糧自給の部屋2011年より
ベトナムは亜熱帯気候に属しているうえに高地や平地などの地形のバリエーションにも富んでおり、さまざまな農作物に適した環境を持ち合わせています。さらに、2012年の調査では、全人口の約70%が農林水産業に従事しております。農業におけるポテンシャルを考えればベトナムは立派な農業大国といえます。
しかし、残念なことにこの事実は日本ではあまり知られていません。かく言う私も、ベトナム人に教えられてはじめて知りました。
なぜベトナムの農業は認知度が低いのでしょうか?
ベトナム農業の体質
私見になりますが、「品質の向上」という意識の欠如がまねいた結果だと私は考えています。ベトナム戦争が終わり、政府は経済復興を目指してドイモイ政策を展開すると、国内の食料供給の安定と外貨取得のために農業に注力をしました。
その過程で、農家は「質よりも量」を重視した農業体制を政府に指導され、この流れが現在も脈々と続いているのです。
この農業への姿勢が高品質、もっと言えばブランドを作り上げる姿勢を疎外しているため、いくら量を生産しても人の印象に残ることがないのです。
この傾向が顕著に出ているのが実はコーヒー豆。
コーヒー豆は大別すると、品質は良いが生産には手間がかかるアラビアカ種と品質は悪いが生産が簡単なロブスタ種の2種類があり、ベトナムでは当然ながら後者が栽培されています。
しかし、このロブスタ種は品質が悪く、コーヒー単体として飲まれることはまれだといいます。
ベトナム産のコーヒー豆は消費者が気にも留めない缶コーヒーやコーヒーゼリーなどの混ぜ物として使用され、キリマンジャロやブルーマウンテンといった有名ブランドの影で存在感を発揮できずにいるのです。
貧困にあえぐ農家
政府はベトナム農業が抱える弱点について気づいてはいるようですが、改善をすることはかなり難しいようです。その理由として、この問題の根本には「農家の貧困化」という問題が隠れているからです。
ベトナムの農作物は低品質なため、そもそもの市場価格の絶対値は低くなります。
しかも、みな等しく低品質であるということは、裏を返せば画一的で農作物に違いがないということを意味します。そのため、どの農家から仕入れても違いがないため、立場の弱い農家は仲買人に安く買い叩かれてしまうのです。
また、ベトナムではまだ日本ほど流通網システムが発達しておりません。
最終消費者の手元に届くまでに無駄に多くの業者を経由するため、その分の負担が農家にのしかかります。
世界銀行の調査によると、農家が最終的に得られる利益率は10%にも満たないといいます。
このように農家が貧しい状況下では、品質の向上を目指すだけの余裕は農家にありません。それどころか、農作機械や肥料、農薬などの基本的なものをそろえる事すら危うい状況にあるのです。
日の丸印のブランド野菜
現在、この危機的状況を打開する計画が多く実行されていますが、その中でも特に注目を集めているのが日本の取り組みです。食の安全を確保するために、日系企業は食の生産拠点を中国に代わる新天地を探している傾向にあります。
その中で、農業としてのポテンシャルが十分に備わっているベトナムが選ばれるのは自然な流れですね。
特に日本が進出をしているのはベトナムの中部に位置するラムドン省です。高地に位置しており、省都ダラットが観光地として有名な省です。
日系企業はこの地域で潤沢な資金と先進的な技術を用いて、現在は付加価の高い野菜の栽培に努めています。この取り組みにより、日系企業と契約をした農家は新しい技術を学ぶことが可能になり、より高い品質の農業が可能となります。
また、日本の徹底した流通網システムを転用することで、従来の無駄なコストを抑えることにも注力しており、農家の安定的な収益に貢献をしているようです。
ここで生産された野菜はホーチミンのスーパーでも売られており、値段は2~3倍と少し高めではありますが、概して食に対する健康意識が高いベトナム人に人気があるようです。
いつか、ベトナムの農家がより高品質な野菜を自ら生産し、世界でも通用するブランドを確立する日が来ることを期待したいですね。
それでは本日は以上になります。次回もよろしくお願いします。 ヘンガップライ。