みなさんこんにちは。
AGSホーチミン事務所の閑野です。
ここホーチミン市では7月30日に高島屋がオープンし、大変な反響をよんでおります。
近年、ベトナムには各国の小売店が進出をしており、各々のオリジナリティを前面に出すことで凌ぎを削りあっています。まさに小売店の戦国時代といっても過言ではありません。地元新聞のサイゴンザイフォンによれば、ここ10年でコンビニの数が約800軒も増加しているというのだから驚きです。
2008年にはサークルKとロッテマート、2009年にはファミリーマート、2011年にはミニストップ、2014年にはイオンモールがベトナムに進出をしており、しかも2017年にはセブンイレブンも本格参入をするようです。
しかし、ここまで多くの企業が参入してもどうしても崩せない牙城がベトナムには存在します。
それは古くからベトナムで伝統的に重宝されてきた「パパママショップ」です。
パパママショップとは
日本では馴染みのない言葉ですが、「パパママショップ」とは「家族経営の小規模な商店」を指します。米国調査会社ニールセンによると、「パパママショップ」の数はベトナム全国に約130万店舗もあると推測されており、しかも日常消費財市場の約85%がこの形態を通じて独占されているといいます。
9,000万人近い人口を誇るベトナムの約85%を占めているわけですから、外資系小売店が苦戦を強いられるのも頷けます。
パパママショップの強さの秘密
「商品の種類」や「価格の安さ」で圧倒的有利な立場にいるにも関わらず、なぜ「パパママショップ」の市場を御しきれずにいるのでしょうか。その理由として主に2つの事が考えられます。
1点目は「パパママショップ」の形態がベトナム人の生活習慣に合っているという点です。
ベトナム人はどこへ行くにも基本的にバイクで移動をします。
そのため、スーパーやコンビニで買い物をする際はバイクを駐車する手間がかかるため、気軽に買い物をする事ができません。
一方で、パパママショップでは店先で店主に商品を頼むだけで買い物が済むため、バイクから降りる手間もかかりません。
これであれば、商品の種類が少ない商店で、しかも多少値が張るような商品でも購入するのも納得がいきます。
2点目は外資企業への規制が厳しい点です。
先ほど述べたように、ベトナムには130万もの「パパママショップ」が存在するため、外資の参入によって生じる衝撃を緩和する必要があります。
そこで設けられたのがENT(Economic Needs Test)と呼ばれる規制です。
この規制は「外資企業が2店舗目以降を出店する際には、近隣のローカル店に与える影響を役所が慎重に考慮して、その上で出店の認可を出す」といったものになります。
この「役所が出店の認可を出す」という点が実はとても厄介で、多くの外資小売店がベトナム進出をする際に苦労をしているようです。
この犠牲者として特に有名なのがロッテマートです。
2010年に2号店をホーチミン市内に開店したものの、役所の曖昧な判断でENTの認可が下りていないことが判明し、開店日初日に一時閉店に追い込まれてしまったという事件です。
役所に再度ENTの認可を申請し、無事に認可が下りたのは開店からなんと6ヶ月後だったそうです。
今後も高島屋のような外資系小売店のベトナム進出が期待されます。
しかし、ベトナムに深く根付いた「パパママショップ」の伝統を打ち崩すにはまだまだ時間がかかりそうですね。
本日は以上になります。 ヘンガップライ。