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みなさんこんにちは。
AGSホーチミン事務所の閑野です。
前回はベトナムにおける幼稚園についてお話をさせていただきました。
引き続き、今回はベトナムの私立小学校についてご紹介したいと思います。
私立小学校の学費
ベトナムの私立小学校は「ベトナム資本の私立小学校」と「外資資本のインターナショナルスクール」の2種類に分けることができます。(以後、前者を「私立学校」、後者を「インターナショナルスクール」とする)ここで特筆すべきはやはり学費です。
大卒の初任給の相場が約300ドルであるにも関わらず、私立学校では約3,000ドル~5,000ドル、インターナショナルスクールでは1万5,000ドルと非常に高い金額になっています。
特にインターナショナルスクールは在越外国人を対象としているだけあって、学費も先進国と遜色ありません。
しかし、ここまで学費が高いにも関らず、これらの学校の人気が衰えるどころか増していくのは驚きです。
地元新聞社の調査によると、私立小学校では入学平均倍率が3~5倍、難関私立小学校であれば8倍と、受験市場の大きさが伺えます。
ちなみにインターナショナルスクールは、平均して全生徒の25~30%がベトナム人で構成されているようです。
授業内容
ここまでの高い学費を払うのですから、学校側が提供する学習環境もそれ相応のものになります。特に学校が独自に展開する授業カリキュラムは公立学校とは一線を画します。
ハノイ屈指の私立小学校「バンマイ小学校」では、高学年になると授業内でのベトナム語を一切禁止し、算数などの基礎科目を含む、すべての授業を英語で行います。
そのために、同校では実際にアメリカで使用されている教科書を輸入し、授業の中に組み込んでいるようです。
また、小等部から中等部にあがる際にはTOEFLの受験を必須化し、その結果をクラス編成に用いるなど徹底した英語教育を行っているようです。
私立学校がなぜ人気?
私立小学校の人気が年々上昇している裏には、公立小学校への不信感が隠れているのではないか、と地元の新聞紙は報道をしています。公立学校では一般のベトナム人を差別無く受け入れるため、生徒間の学力に大きな格差が存在します。(詳しくは前回の幼稚園に関する記事を参考にしてください。)
生徒の学習レベルがバラバラになると、全ての生徒のレベルに等しく合致した授業を行うことは難しくなります。
そのため、結果的にどの生徒の身にもならない中途半端な授業になってしまうのです。
その他にも、私立学校と比べて前近代的な授業内容(故ホーチミンの歴史や思想に関する授業など)などがいまだに必修授業として残っているなどといった批判もあるようです。
公立学校の質の低下?
しかし、「公立学校の質の低下」にも明確な原因があります。その最たるものが、やはり「若年層の人口増加」だと私は考えています。
ベトナムは平均年齢が28歳と非常に若い国で、その大半が30歳未満で構成されています。
そのため、小学校は受け入れ可能な児童数のキャパシティの限界を迎えており、すでに学校運営に支障をきたすまでになっているようです。
このあおりを一番大きく受けているのが実は小学校教員で、新任の初任給は約200万VNDと国内でも最底辺の給与体系となっています。
しかも、小学校教員は仕事量が非常に多く、あまりの激務にアルバイトをする時間すらないといいます。(ベトナムでは小学校教員を除くほぼ全ての教員が副業を持っている)
このような待遇では教員を志望する有望な学生も現れるわけも無く、小学校教員の採用枠は例年定員割れを起こしているようです。
ベトナムは今後も順調に経済成長を遂げていくと同時に、教育に対する需要も大きくなっていくことが予想されます。
しかし、どれだけ大きな私立学校への需要が生まれようと、大多数の子供が公立学校に進学するという事実を覆すことはできません。
今後、いかにして公立学校を改善していくか、ベトナム政府の動向が気になるところです。
今回は以上になります。それではまた。 ヘンガップライ。