2018 年 12 月 19 日
文責:大橋 創
政府は、2018 年 11 月 7 日、労働法第 63 条 3 項に規定する職場における民主的規則の施行細則を規定する政令 149/2018/ND-CP を制定しました。同政令は 2019 年 1 月 1 日より施行し、政令60/2013/ND-CP に代置します。
労働法第 63 条ないし第 65 条は職場における雇用者と被雇用者との間の対話について規定し、相互に情報を共有し、理解を深めることを目的とし、雇用者の生産・経営状況、労働契約・集団労働協約・就業規則等の履行、労働条件、双方の要求等が内容とされています。また、職場における対話は、3 ヶ月毎に 1 回、又は一方当事者の要求に基づいて実施され、雇用者には対話実施のための場所の準備、物質的条件の整備が義務付けられています。そして、労働法第63条3項には「雇用者と被雇用者は、政府に規定に基づいて、職場における民主的規則を履行する義務を負う」と規定されています。政令60/2013/ND-CP 及び政令 149/2018/ND-CP は、同条項の「政府の規定」に該当するものです。
政令 149/2018/ND-CP においては、10 名以上の労働者を雇用及び使用する雇用者は、
(1)被雇用者との間での会議の実施
(2)職場における民主的規制の制定に関する義務を負います(同政令第 12 条 2 項)
(1)の会議は、雇用者及び労働組合代表者との間で、総会又は代表者との会合の形式にて、毎年 1回開催されるもので、会議の内容は、雇用者の生産・経営状況、労働契約・集団労働協約・就業規則等の履行等の上記の労働法に規定されている事項になります。会議の組織、内容、参加者、時間、場所、手続、決議の実施に関する責任、及び開示の形式は、各企業の職場における民主的規制((2)規定の規制)によることになります(同政令第 9 条)。
(2)に関しては、雇用者は、労働組合との協議によって同政令の実施のための職場における民主的規制を制定し、適用前には被雇用者に公開しなければなりません(同政令第 11 条 1 項・2 項)。その他、雇用者による公開が要請されている情報としては、企業の就業規則その他被雇用者の権利及び義務を規定する内規、(1)の会議の決議書、労働組合、各種社会保険の保険料の支払に関する情報等があります(同政令第 4 条)。政令 60/2013/ND-CP においては、雇用者、事業所、部署、チームの生産、事業計画の開示も求められていましたが(政令 60/2013/ND-CP 第 6 条 1 項)、新政令においては削除されています。
上記(1)の被雇用者との会議とは別に、雇用者は定期的に被雇用者、又は労働組合の代表部との間で協議をする必要があり(政令 149/2018/ND-CP 第 8 条 1 項)、内容、参加者、時間、場所等は雇用者の民主的規制に依拠します。政令 60/2013/ND-CP においては 3 ヶ月に 1 回の頻度で実施すると規定されていましたが(同政令第10条1項)、この規定は新政令においては削除されています。なお、上記(1)の会議とこの定期的な協議が同じ日に実施される場合には、別途定期的な協議を開催する必要はありません (政令 149/2018/ND-CP 第 8 条 2 項)。
上記(1)及び(2)の他にも政令 149/2018/ND-CP には、被雇用者が協議をする法的権利を有する事項(内規の制定、就業規則の修正、労働条件の向上に関する解決策の採用等)(第 5 条)、被雇用者による検査、調査権限のある事項(労働契約、就業規則、集団労働協約の遵守等)(第 7 条)も規定されています。
職場における対話に関する規定の違反に対しては、法規に基づいて事業所における民主的規則を厳格に履行しない場合、及び職場における対話を行うために場所を用意せず、その他の物理的条件を整えない場合には、雇用者に対して警告処分又は 50 万~100 万ドンの罰金(政令 95/2013/ND-CP 第 11条 1 項)、職場における対話を 3 ヶ月に 1 回行わない場合、事業所の労働組合の代表部が職場における対話を要求する時に対話を行わない場合には、雇用者に対して 200 万~500 万ドンの罰金(同条 2 項)が課される可能性があります。
以上