Search

ベトナムコーヒーの生産と消費【2016.9】

I. ベトナム産コーヒーの生産状況

ベトナムはブラジルに次ぎ、世界第二位のコーヒー生産・輸出国である。ここ3年でベトナムのコーヒー産業は急激に成長しており、2014年のコーヒー農園の総面積は653,000haと1年前の2013年に比べて2.7%増加している。

ベトナムコーヒーの生産量&栽培面積

1

(出典: 米国農務省、ベトナム統計総局 STINFO作成)

ベトナムで生産しているコーヒーの主な種類はアラビカ(Arabica)、ロブスタ(Robusta)、エクスセルサス(Excelsas)の3種類である。その中で、ロブスタの生産量は世界で消費されるコーヒーの1/3を占めており、国内コーヒー農園の90%以上がこの品種を栽培しているという。ベトナム国内でコーヒーの生産が盛んな地域は中部高原エリアのダクラク省(Dak Lak)とラムドン省(Lam Dong)、ダクノン省(Dak Nong)とされている。[1]

ベトナム各地のコーヒー農園の面積 


地方 2013

(ヘクタール)
2014

(ヘクタール)
2014年増加率

(パーセント)
Dak Lak 207,152 210,000 32.1
Lam Dong 151,565 153,432 23.5
Dak Nong 122,278 122,278 18.7
Gia Lai 77,627 78,030 11.9

(出典:農業農村開発省、ベトナム貿易推進部 STINFO作成)


II. ベトナム国内のコーヒー消費の状況

ベトナムは世界第二位のコーヒー生産・輸出国だが、国内のコーヒーの消費量だけで言えば他国に軍配が上がる。2013年のベトナム人の一人当たりのコーヒー消費量は1.15kg/年である。一方で、アジアでは日本が2.9kg/年、韓国が2.42kg/年、タイが1.95kg/年となっており、日本の消費量が一番高い。[2]

ベトナム国内のコーヒー消費量は、輸出量のたった5%相当であり、その量は約61,000トン/年となっている。その中で、インスタントコーヒー量は9,000トン、有名メーカーのコーヒーは35,000トンで残りはノンブランドのコーヒーである。

国内のコーヒー市場は毎年18%の成長率を記録しており、インスタントコーヒーが22%、焙煎コーヒーが13%となっている。コーヒーの消費量が輸出量に比べて少ない理由として、都市部以外の農村部ではいまだに伝統的なお茶を好む傾向があるためである。[3]

しかし、スターバックス(Starbucks)、マックカフェ(McCafe)、コーヒービーン(Coffee Bean & Tea Leaf)、グロリア・ジーンズ(Gloria Jeans)、Effoc、チュングエン(Trung Nguyen)、パッシオ(Passio)などのチェーン店が次々と出店していることからも、コーヒーの消費が増加している事が伺える。市場調査会社大手のユーロモニター(Euromonitor)によると、カフェチェーン店はコーヒー産業の中でも最も好調に成長をしている産業の一つとされており、その売上の成長率は毎年32%のペースで上昇しているという。[4]

III. ベトナムコーヒーの輸出入の現状  [5]

ベトナム工商省の統計によると、2014~2015年(2014年10月~2015年9月)は昨年の同時期(2013年10月~2014年9月)と比べて大幅に減少しており、輸出量にして23.5%、金額にして21.9%減少している。

2

10月から次年の9月までの間で算出(出典:Vietdata)

3(出典:Vietdata)

ベトナム貿易機関のベトナム貿易促進庁(Vietrade)によると、2015年にベトナムコーヒーは80か国に輸出されている。その中でも、ドイツと米国への輸出量は大きく、ドイツは35,882万USD(13.42%市場シェア占め)、米国は31,333万USD (11.72%市場シェア占め)となっている。それ以外では、スペイン(23,059万USD)、イタリア(19,856万USD)、日本(16,955万USD)が主要の輸出先となっている。

4

(出典:Vietdata)


IV. 将来の発展傾向

国際コーヒー機関(International Coffee Organization)会長のネスト オソリオ(Nesto Osorio)氏によると、ベトナムコーヒー産業の強みは、生産コストが他の品種と比べて格安なロブスタ(Robusta)の生産量が世界一な点にあるという。インスタントコーヒーの製造コストを大幅に削減できるため、ロブスタは世界各国の加工業者に好まれる傾向にあるという。同機関の見解では、年に2~3%の需要増加を見込んでいるという。以上のことから、ベトナムコーヒーが持つポテンシャルは高く、将来的には大きな成長を遂げ、世界のコーヒー市場を席巻する可能性も大いに期待できるといえる。

そのためにも、コーヒーの品質を安定化するために近代的な技術を導入し、早急に栽培環境を改善する必要がある。[6]

V. ベトナム人のコーヒー消費習慣のアンケート

対象:ホーチミン市在住のベトナム人 (50人)

年齢:15~31歳以上 (15~20歳:6%、 21~30歳: 68%、31歳以上:26%)

性別:男性(36%)、女性(64%)

職業:会社員(50%)、専門職業(30%)、学生(16%)、自営業(4%)

5
コーヒーを飲む頻度が1週間で1回以下と答えた人が38%を占めている。多くのカフェが立ち並ぶホーチミン市でも、習慣的にコーヒーを飲まないベトナム人は多くいるようだ。

またコーヒーを飲む時間帯は50%が午前(7時から10時)、12%が昼(11時から13時)、20%が午後(14時から17時)、18%が夜(19時から24時)にコーヒーを飲むと答えている。

6
ホーチミン市には様々な形態のカフェが出店しており、未だに路上カフェや個人経営のカフェの人気が根強い。最も多い40%がチェーン店で、次に多い30%が自宅でコーヒーを飲むと答えている。後者の数が多い理由として、インスタントコーヒーの普及が関係している可能性がある。

7
コーヒーを飲む動機は多くあるが、その中でも純粋に「コーヒーが好き」だからコーヒーを飲むと答えた人が一番多かった。

8
Nescafeの人気が一番高い事が分かった。Nescafeがここまでの人気を誇るのは、お菓子やアイス、そして飲料品(ミロ)などの幅広い分野で活躍しているため、認知度が他のメーカーよりも高い事が影響しているように思える。

Birdyとは、味の素ベトナム社の飲料ブランドである。インスタントコーヒー以外にも、ミルクティや抹茶ラテの粉末も揃えている。

9
ホーチミン市では、ハイランズコーヒー(Highlands)、フックロン(Phuc Long)、アーバンステーション(Urban station)の地場系3つが人気であることがわかった。特にハイランズコーヒーは人気があるようで、72%の回答者が足を運んだ事があると答えている。一方、カフェベネ(Café Bene)やエンジェルインアス(Angel-in-us)やグロリア・ジーンズ(Gloria Jeans)など外資系ブランドはまだ店舗数が少ないためか、あまり人気がないようだった。

また、コーヒーの人気は根強く、全体の56%が紅茶よりもコーヒーを好むと答えている。

VI. 結論

現在、ベトナム産のコーヒーは生産量を徐々に増加させているが、そのほとんどが輸出用である。ベトナムは世界第二位のコーヒー輸出国であるが、その一方で国内のコーヒー消費量はそこまで高くはない。しかし、ハイランズコーヒー (Highlands)やフックロン(Phuc Long) などのコーヒーチェーン店が多く出現している昨今、都市部におけるコーヒーの消費量は増加傾向にある。

大半のベトナム人は「コーヒーが好きだから」コーヒーを飲んでいることが今回の調査で分かったため、今後は家庭で手軽に飲めるインスタントコーヒーの需要もさらに拡大していくはずだ。

[1] 近年のベトナムコーヒー http://www.cesti.gov.vn/the-gioi-du-lieu/ca-phe-viet-nam-nhung-nam-qua.html(2015年3月)

[2] ベトナム人の一人当たりのコーヒー消費 http://tuoitre.vn/tin/kinh-te/20130314/nguoi-viet-tieu-thu-trung-binh-115kg-ca-phenam/537848.html(2013年3月14日)

[3] ベトナムコーヒー市場と国内企業の機会 http://www.brandsvietnam.com/146-Thi-truong-ca-phe-Viet-Nam-va-co-hoi-cho-doanh-nghiep-trong-nuoc(2012年8月21日)

[4] 2015年の国内コーヒー消費と2016年の予想http://www.vietrade.gov.vn/ca-phe/5418-tieu-thu-ca-phe-nam-2015-va-du-bao-nam-2016.html(2015年10月14日)

[5] 2011~2015年のベトナムコーヒー市場http://www.vietdata.vn/tong-ket-thi-truong-ca-phe-viet-nam-giai-oan-2011-2015-824090430 (2016年7月3日)

[6] ベトナムコーヒーが世界市場を席巻するhttp://binhdien.com/dong-hanh-cung-nha-nong/thong-tin-nha-nong/de-nganh-ca-phe-viet-nam-chi-phoi-thi-truong-the-gioi.html

Japan
Vietnam