Search

ホーチミン市民の低農薬野菜に対する意識【2016.7】

I. 調査目的・方法

1. 調査目標
  • 低農薬野菜の購入者に見られる関連性を見つけ出す。
  • ホーチミン市における低農薬野菜市場の将来性を探る。
2. 調査方法
  • インターネットでの情報収集
  • ホーチミン市在住のベトナム人にアンケートを依頼

II.低農薬野菜の現状

1. 低農薬野菜とは
栽培をする上で、GAP(Good Agriculture Practices)の基準満たす土壌、水、環境、栄養素、そして必要最低限の化学肥料を用いて生産され、かつVietGap,やGlobalGAP が発行する認証を受けた野菜を指す。[1]

※VietGapはベトナム国内の食品安全基準を発行する団体。同じく、GlobalGAPはヨーロッパを発祥する食品安全基準を発行する国際機関。
2.低農薬野菜の需要と供給
  • 低農薬野菜供給
ベトナムの大都市における低農薬野菜の自給率は約50~60% 程度で、残りは周辺地域や中国などから仕入れている。しかし、こられらの産地の低農薬野菜は残留農薬検査がほとんど行われていない。

しかも、日本でいう生協のような組織化された店舗を通じて流通しているにも関わらず、販売店舗が少ないため、購入希望の可能性がある客に上手くアプローチが出来ていない現状にある。[2]

VietGapの低農薬野菜は、普通の野菜に比べると2~3倍も値が張るが、高い安全性から広く認知をされている。しかし、まだ購入者自体が少ないため、ホーチミン市では一般家庭の80~90%が市場で普通の野菜を購入している。[3]
  • 低農薬野菜の需要
低農薬野菜の需要は徐々に高まりつつある。特に、ホーチミンやハノイなどの大都市圏では、単純に野菜自体の消費量が高まる傾向にあり、平均的なベトナム人の年間の野菜消費量は約106kg にも達する。[3]

ベトナム商工省(Ministry of Industry and Trade)の調査によると、ホーチミン市内のスーパーやコンビニにおける普通の野菜の販売量は1日約217.53トン、VietGapの低農薬野菜は約98.63トン。善戦をしているようにも見えるが、ホーチミン市近郊の生産者はこのうちの約38% しか供給しておらず、残りはベトナム西部(山沿い)や東部(海沿い)、他国が補って供給をしている。[4]

ホーチミン市内のCo.opMartを例にすると、毎日40~45トンの低農薬野菜が販売されているが、そのうちホーチミン市近郊の卸業者が関与したものは約20%となっている。

ホーチミン市近郊における低農薬野菜の生産量は限られているため、他の地域の生産者に依存せざる得ないのが現状である。[1]

III. 低農薬野菜の購入意識

  • 低農薬野菜の購入場所:
ベトナム人が低農薬野菜を買う場合、スーパーよりも市場での購入を好む傾向がある。

2016-08-01_135903
市場での購入理由:市場では多種多様な野菜が売られているため選択肢が多く、また馴染みのある店もあるため、店で買うよりも信頼する事ができる。また、交渉次第では値引きができるため、安く購入することができる。


  • 低農薬野菜の信用度
2016-08-01_135926


ホーチミン市のベトナム人は市場で低農薬野菜を購入するが、その野菜が本当に低農薬だと考える人は半分ほどである。一方、スーパーで購入する場合は約70%がその品質を信用しているという。その理由として、スーパーでは野菜に生産者の社名が記載されており、それだけ安全が保証されているからだという。[5]


  • 低農薬野菜を購入する基準
低農薬野菜の購入する際の基準は価格、品質、接客態度、産地、購入場所である。

2016-08-01_140039
消費者にとって一番重要な基準は野菜の品質であり、その次が価格であるという。その理由として、近年は平均的な所得層にも食に対する意識が芽生えてきているため、低農薬野菜を選ぶ際にも少しでも安い物を選ぼうとする傾向にある。

今回の調査の中で、店員の接客態度に関してはあまり重要視されていないことが分かったが、安全でかつ価格が安い野菜を購入する傾向にあるからこそ、店員がそれを市民にアピールをする努力が必要であるともいえる。[6]

IV. ベトナム市場における低農薬野菜の将来性

現在のベトナム都市部の住民は2,000万人といわれており、中流層や新婚の核家族が増加している傾向にある。そのため、従来のライフスタイルから全く新しい近代的なものへと変わりつつある。その中で、今までは意識されていなかった食への関心が強まりつつあり、今後はより一層の需要が見込まれている。

この点に着目したVingroup、Hoa Phat、Hoang Anh Gia Lai等の大手ベトナム企業が農業分野に多額の投資しており、近い将来ベトナムの野菜市場が大きく変化する事も十分に考えられる。

このことについてアンザン省のAntesco社( 野菜・食品を主に扱う)のHuynh Quang Dau氏は、ベトナム国内の野菜市場は今後も急激に発展していくだろう。と見解を述べている。[7]

しかし、その一方でTPPの合意がなされた場合、国外から安全でかつ安全な農作物が輸入される可能性もあり、国内の生産者が国際競争にいかにして立ち向かっていくかを考える必要がある。

———————
[1] ホーチミン市の低農薬野菜市場
http://123doc.org/document/29187-khao-sat-thi-truong-rau-sach-tai-tphcm-doc.htm?page=4

[2] ホーチミン市の低農薬野菜生産:流通チェーンの抜け穴 http://rauquatuoivasach.com/bvct/chi-tiet/6/san-xuat-rau-sach-tai-tphcm-lo-hong-lon-tu-khau-phan-phoi.html

[3] ベトナム市場の安全な野菜http://www.nguoitieudungvietnam.org/modules/general/index.php?page=news&catID=5&id=19136&act=detail

[4]低農薬野菜市場:製造業者や小売業者の困難な結びつき
http://vietstock.vn/201。3/12/thi-truong-rau-sach-chua-ket-noi-duoc-nha-san-xuat-va-nha-ban-le-768-324039.htm

[5]主婦はどこで安全な食品を買うか
http://tuoitre.vn/tin/kinh-te/thi-truong/20160108/ba-noi-tro-biet-mua-thuc-pham-sach-o-dau/1034590.html

[6] ホーチミン市Binh Thanh区住民の野菜購入と習慣
https://issuu.com/olivernguyenpupu-kun/docs/nhom_5_-_hanh_vi_mua_va_su_dung_rau

[7] ベトナムの安全な野菜市場
http://www.doanhnhansaigon.vn/chuyen-lam-an/phat-trien-thi-truong-rau-qua-sach-tai-viet-nam/1089431/

Japan
Vietnam