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【ブログ】リーガルインターン追住(おいずみ)のインターン記⑦〜公的保険料の算定対象と給与の支払時期〜



こんにちは。AGSリーガルインターンの追住です。

今回は「公的保険料の算定対象」と「給与の支払時期」について。



前回はこちら



1.公的保険料の算定対象に関する社会保険法の改正

先日、公布され、2016年1月より施行される新社会保険法により、公的保険料の算定対象が、これまでの基本給のみから、基本給と全ての手当の合計金額となります。

これまでは、基本給と手当の割合を例えば5:5等として会社の保険料負担を半減させるような対応が採られる例もみられましたが、同法の改正により、これが認められなくなる可能性が高まり、実務上重大なインパクトとなりうるところです。

なお、同法89条2項は、前段で

「使用者の定めた給与制度に従い社会保険料を支払う従業員について、社会保険料の算定基礎となる月給は、労働法に規定される基本給、給与ベース手当とする」と定め、後段で、

「社会保険料の算定基礎となる月給は、2018年1月1日から、労働法に規定される基本給、給与ベース手当およびその他金額とする」(仮訳)と定めているところ、テト賞与、四半期賞与、業績賞与などは上記「その他金額」に含まれると解釈され得ますので、これら賞与につきましては算入時期がずれると解釈されうるものと考えられます。



2.給与の支払時期

日本では、給与の支払時期を定める労働基準法24条2項本文により「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」と規定されているので、締め日と支払日を同月にすることも、又は支払日を締め日の翌月とすることも認められます。

ここベトナムにおいても多くの外資系企業が支払日を締め日の翌月、例えば翌10日、翌15日等としています。

しかし、先日公布された通達(Circular)は、月給の支払日について以下のように定めます。

「月給は労働者が勤務した当該月の内に、月に一度又は二度支払われなければならない。」(仮訳)

すなわち、規定上、締め日と支払日を同月にしなければならず、支払日を締め日の翌月とすることは違法となるとも解されます。例えば、8月分の月給は8月末日までに支払われなければなりません。これも、多くの日系企業にとって実務上不可能或いは著しく困難ということになるのではないかと思います。

そして上記規定に違反した場合、最大で会社側に5千万ドンの罰金が科されることが議定により定められています。

とすると、毎月きちんと給与を支払っているベトナムの外資系企業のほとんどが意図せず違法な給与支払方法を行っていることになってしまいます。

しかし、上記規定の趣旨は、ベトナムでは給与支払の遅滞が頻繁に行われるローカル企業が多いことに鑑みて、労働者の給与確保を図る点にあるとも考えられます。とするならば、毎月決まった時期に給与が確実に支払われているほとんどの日系企業様に対して、あえて上記罰金を科す必要があるでしょうか。

上記通達はベトナムの雇用状況に照らして非現実的な義務を使用者に課しているように思われます。

しかし明文により違法であることが規定された以上、対応を採るか否か、採るとしていかなる対応とするか、意思決定は必要となります。

具体的な対応につきましては、弊社へお問い合わせください。



3.以上のように、ベトナムでは実務上重大なインパクトを与える事項について法令の改正が頻繁に行われます。

日系企業様におかれましては、意図せずして法令違反とならないよう、ベトナム法令の改正について、専門家にご相談されることをお勧めします。



弊社ではベトナム法に精通した日本人弁護士、ベトナム人弁護士による包括的なリーガルサービスを提供しております。



ベトナムにご進出の際は、是非弊社へお問い合わせ下さい。

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