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【ブログ】若者の国、ベトナムに迫る高齢者問題の影?

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みなさんこんにちは。

AGSホーチミン事務所の閑野です。

ベトナムに対して「若者が多い新興国」といったイメージを抱かれる日本人が多くいるように感じます。

実際、ベトナムの平均年齢は(2015年の国連の調査では)28歳と非常に若く、この印象もあながち間違いではないといえます。(ちなみに同調査では日本が46.5歳、シンガポールが40歳、タイが38歳)

しかし、その背景で「高齢化」といった平均年齢のデータと大きく矛盾した社会問題が進展している事はまだ日本ではあまり知られていません。

現状

2016年に世界銀行が公表した「ベトナムにおける年齢層」に関する報告書によれば、2015年時点のベトナムにおける高齢者人口は630万人を突破したといいます。これは、全人口9,000万人超のうち約7%を占めている事になります。

国連における定義では「総人口の7%を高齢者が占める社会を高齢化社会、14%を占める社会を高齢社会、21%を占める社会を超高齢社会」として規定しているため、この基準に則ればベトナムはすでに高齢化社会であるといえます。

急激な高齢化の原因は?

なぜ平均年齢が低い反面、高齢者の人口比率が上昇してしまったのでしょうか?

この理由は諸説ありますが、私が考える主な要因として「生活水準の急激な上昇」と「ベトナム政府による人口統制政策」の2点が挙げられます。

皆さんもご存知のように、ベトナムは1975年に至るまでベトナム戦争という苦難を強いられました。戦乱の渦中では、政府は国民に十分な生活を支えるだけの余力があるわけも無く、従って国民の平均寿命は今よりも低い数字を記録していました。

しかし、1986年からベトナム政府主導による近代化政策「ドイモイ」が本格的に導入されると、国民の生活水準は飛躍的な上昇を迎え、国民の平均寿命を大きく拡大させる事につながりました。

世界銀行によるベトナムの平均寿命に関する調査によれば、80年時点で67.43歳であった平均寿命が2014年には75.63歳にまで上昇しているといいます。

かくして、ベトナムの平均寿命が大幅な変化が生じるようになりますが、その一方で人口も大幅に増加をします。

過剰な人口を危惧したベトナム政府は、出生率をコントロールするために「2人っ子政策」を実施し、若年層の人口拡大に歯止めをかけるようになります。

これにより、「平均寿命が高い」その一方で「出生率が低い」といった矛盾した状況が生まれ、結果として高齢化現象を招くことになりました。

高齢化対策

高齢化が進行する社会で最も懸念すべき点は「どのように高齢者を介護するか」という点に尽きると思いますが、ベトナムではこの点において大きく先進国に遅れていると言えます。

ベトナムには現在、介護施設に相当する施設が全国に432拠点存在する事が確認されていますが、これらの施設の対象は「高齢者」だけでなく「障害者」や「孤児」といった広い意味でのハンディキャップを持った人々とされています。

そのような意味で言えば、「高齢者介護に特化」した専門施設は非常に数が限られており、その数は全国に10箇所しかないと言われています(私が確認した中ではホーチミン市には1箇所のみ)。

ベトナムでは親の介護は子供の役目として認識されており、他人に親の介護を任せることはある種「親不孝」にされているようです。そのため、今は現状の介護施設数でまかなえているようですが、核家族化が急速に進む昨今を考慮すると、この習慣にも限界が来る事が予想されます。

総括

国連人口基金(UNFPA)とグローバルエイジング研究所(GAI)の共催により開催された「高齢化対策に関するシンポジウム」で、ベトナムは2030年までに高齢者人口比率が14%に達し、高齢社会に突入するだろう事が指摘されました。

この事からも、ベトナム政府が高齢者問題をいかに処理し、解決していくかが重要になります。

そのような意味では、2007年にいち早く超高齢社会に達した日本が、まだノウハウの少ないベトナムの高齢者市場に進出し、市場を開拓する事ができるチャンスでもあるといえます。

日本にとってのブルーオーシャンとなりうるベトナムの高齢者事業から目が話せませんね。

それでは本日は以上になります。           ヘンガップライ。

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