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【ブログ】日本とベトナムの消費税法の共通点・相違点②

皆様こんにちは。

AGSホーチミン事務所の会計・税務部でインターンをしている川島と申します。

Vol.1 「ベトナムの整形事情」

Vol.2 「ベトナムの物価上昇率と最低賃金」

Vol.3「日本とベトナムの消費税法の共通点・相違点①」

前回は消費税法の2カ国間比較を行いました。今回も引き続き「税率」の観点から最初にお話しをしていきたいと思います。

目次

  • はじめに
  • 消費税とVATの概要
  • 共通点と相違点
    Ⅰ. 課税対象 
    Ⅱ. 税率
    Ⅲ. 仕入れ税額控除計算
  • まとめ
Ⅱ. 税率
次に税率の共通点・相違点を見ていきます。まず日本は現在単一税率を採用しており、標準税率8%を適用しています。他方、ベトナムでは複数税率が採用されており標準税率を10%としながらも生活必需品やサービスに関しては5%が課税されています。共通点としては、両国とも輸出品に関しては免税取引として扱われるため、消費税(VAT)が0%つまり税金が発生しません。また、日本では消費税とは別にタバコやお酒等に対してそれぞれタバコ税と酒税が課せられています。ベトナムでも同様に特別消費税(SST)としてタバコやお酒に対してVATとは別に課税されています。

ただし日本では2019年10月以降に関しては税率が10%となる予定であります。また同時に軽減税率制度も導入されるため一部の物品に関しては軽減税率として8%が適用される予定であり、これまでの単一税率から複数税率への移行が計画されています。このため将来的な税率適用の方針に関して両国の相違点はなくなっていくと言えそうです。


日本(改正前) 日本(改正後) ベトナム
標準税率 8%: 国税6.3%、地方税1.7% 10%: 国税7.8%、地方税2.2% 10%: 国税10%
軽減税率・対象 税率: 8%(国税6.24%、地方税1.76%)

対象: ①酒類・外食を除く飲食料品週2回以上発行される新聞(定期購買に基づく)
税率: 5%(国税5%)

対象:生活必需品・必需サービス 
免税取引 0%適用 0%適用 0%適用
消費税・VATとは別に課される特別な税 対象: 酒、タバコ等 対象: 酒、タバコ等 対象: 贅沢品(酒、タバコ、宝くじ等)
Ⅲ. 仕入れ税額控除計算
最後に消費税・VATの仕入れ税額控除計算における相違点についてお話します。先述の通り、日本では現在単一税率が採用されベトナムでは複数税率が採用されています。これらの課税方式の差異に基づき日本では「請求書等保存方式(以下帳簿方式)」、ベトナムでは「インボイス方式」が仕入れ税額控除計算時に用いられています。日本で仕入れ税額控除が認められるためには取引日と対価の額(税込)等の記載事項がある ①帳簿の保存②第三者発行の証拠書類等の保存が必要となります。ベトナムでは控除が認められるために ①公式インボイスまたは納税証明書の添付②銀行送金証明(2千万ドン以上の取引)③契約書、通関申告書 (輸入取引)が必要となります。①の公式インボイスはレッドインボイスとしてベトナムで事業を行う場合には広く知られており、その添付はVATのみならず法人税(CIT)の損金算入要件の一つでもあります。

日本では単一税率のため請求書に税額や税率の記載がない場合でも税額控除の計算時に問題は生じませんがベトナムや同様にVATを採用している欧州諸国では課税事業者の登録番号と税率ごとのVAT額等の記載が義務付けられています。将来的には日本が複数税率に対応するため、2023年にインボイス方式が導入される予定ですが仮にインボイスに登録番号の記載が義務付けられるとこれまで仕入れ税額控除が認められていた免税事業者からの仕入れが認められなくなる事態になるためどのような形で帳簿方式とインボイス方式を折衷させていくか注目が集まります。


日本:帳簿方式 ベトナム:インボイス方式
仕入れ税額控除適用要件 ①帳簿の保存

②第三者が発行した証拠書類等の保存
①証拠書類(例:公式インボイス)等の添付

②銀行送金証明(2千万ドン以上)

③契約書、通関申告書(輸出取引)
免税事業者からの仕入れ 仕入れ税額控除対象 対象外
インボイス記載事項

①適用税率、税額

②課税事業者登録番号
義務なし 義務あり

まとめ

今まで述べてきた概要は下記の通りです。


日本 ベトナム
課税対象 国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の輸入 ベトナム国内において製造、販売、消費される財およびサービス(海外からの輸入も含まれる)
標準税率 8%(2019年10月から10%の予定) 10%
課税方式 単一税率 複数税率
消費税とは別の特別な税 あり あり
仕入税額控除計算 帳簿方式(一括計算) インボイス方式(個別計算)


上記比較表を見ると現在の日本とベトナムの消費税法は課税方式や控除額計算に大きな相違点がありますが2019年以降日本が軽減税率を導入する予定であることを考慮すると今後この相違点は徐々になくなっていくと予想されます。特にインボイス方式が今後導入予定であるため、日本で事業を営む個人・法人にとって事務手続きの複雑化といった点で影響が大きいことから税制改正には注視する必要がありそうです。



今回はこの辺で失礼させていただきます。



なお、当該ブログは信頼できる情報を基に作成していますが情報の正確性・完全性を保障するものではありません。



川島

参照元:



日本国税庁HP

日本財務省HP

ベトナム法務省

ジェトロ(JETRO)HP

PwC

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Vietnam