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【AGS 法務部ブログ】ベトナムのコロナ禍における休業手当につい て

1.はじめに

 皆様、 こんにちは! AGS ハノイ法務部の小川です。

 先日実施したお客様アンケートの「どのような内容のブログだったら読みたいか」という質問で、 最も多くのご要望をいただいたのが「労務」についてでした。

 ベトナム在住者の方はご存知の方も多いかと思いますが、 今年新労働法が施行されており、ベトナムの法令は曖昧な文脈により解釈が多様化しているため、 実務上運用をどのように行うのか等について個別にご相談をいただくことが増えております。

 特に現在のコロナウイルス感染拡大によるロックダウンで、 通常業務を行うことが出来なくなった企業様からは休業手当に関する ご質問を多くいただいており、 こういった災害によるものは感染拡大の状況次第で運用が変更されることもあるため、迅速な情報収集も重要になってきます。

 そこで、今回はベトナムのコロナ禍における休業手当についてご紹介したいと思います。

2.新労働法下における休業時の賃金支払い規定

 ベトナム 2019 年労働法 45/2019/QH14(新労働法)によると、休業時の賃金支払いについて以下の通り 規定されております。

99 条 休業時の賃金

休業時において、 労働者は以下の賃金を支払われる。
1.使用者に過失による場合、 労働者は労働契約に従った賃金全額を支払われる。
2.労働者の過失による場合、 その労働者は賃金を支払われない;同じ部署の他の労働者で休業しているものは、 両当事者の合意した水準に従って賃金を支払われるが、 最低賃金を下回ることはできない。
3.使用者の過失によらない停電、断水、自然災害、火災、危険な疫病、権限を有する国家機関の要求に従った損害、活動場所の移動又は経済的理由による場合は、両当事者は以下のように休業時の賃金を合意する:
a) 休業が 14 営業日以下の場合、休業時の賃金は合意によるが、最低賃金を下回らない。
b) 休業が 14 営業日を超える場合、休業時の賃金は合意によるが、当初の 14 日間については最低賃金を下回らないことを保証しなければならない。

 第 99 3 項において、 旧労働法では 14 営業日を超過した日数分についても最低賃金を下回らないことを保証するように規定されていたため、 労働者の立場から見ると少し不利になったように感じられます。 ただ、休業時の賃金について使用者、労働者間の合意の上とされていることから交渉の余地もありそうです。

 日本では労働基準法第 26 条により使用者の過失により休業する場合、平均賃金の 60%以上を支払わなければいけないこと、また具体的な平均賃金算出方法も規定されていることから、ベトナムと比較して柔軟性がない分、運用する上では統率がとりやすいように思えます。

3.コロナ禍におけるベトナム政府の支援策

 日本ではコロナウイルスの感染拡大によって被害を受けた企業に対して、給付金、補助金、融資等の支援策が用意されていますが、ベトナムにもございます。

 現在 1 ヶ月ほど続く厳しい社会隔離措置が実施されており、省をまたぐ移動が困難、また出勤する人数に制限を設ける必要がある等の規定により、従業員を休業させなくてはいけない企業が増えております。

 そういった企業に向けた支援策として以下が用意されております。

労働契約の履行の一時停止、無給休暇を取得する労働者に対する補助政策

適用対象

1. 2021 5 1 日から 2021 12 31 日までの間に労働契約の履行の一時停止または無給休暇の取得が開始され、この期間に 15 日以上連続して一時停止または無給休暇の取得をする者。

2. 労働契約の履行の一時停止、無給休暇の時点の前月まで強制社会保険に加入している者。

補助額

1. 連続 15 日以上 30 日未満: 1,855,000 VND/人(約 9,000 円/人)

2. 30 日以上: 3,710,000 VND/人(約 18,000 円/人)

3. 妊娠中の労働者、 6 歳未満の実子または養子を養育している労働者には、 1,000,000VND/子供の人数が加算される。

休業する労働者に対する補助政策

適用対象

1. 労働契約の下で労働に従事する労働者で、 労働法第 99 3 項に基づいて休業している者、または 2021 5 1 日から 2021 12 31 日までの期間中、管轄機関の要請により 14 日以上の隔離措置、封鎖措置の対象地域にいる者。

2. 労働法第 99 3 項に基づく休業の前月まで強制社会保険に加入している 者。

補助額

1. 補助額: 1,000,000 VND/人(約 5,000 円/人)
2. 妊娠中の労働者、 6 歳未満の実子または養子を養育している労働者には、 1,000,000VND/子供の人数が加算される。

 2021 7 月に施行されて以降、すでに実際に給付された事例もあり、実務として運用されているようです。 日本で受けられる支援金額と比較すると少額に思えますが、ベトナム人の平均月収が約 3 万円であることを考慮しての金額設定なのかもしれません。

 実際に申請する際の手続き詳細については以下決定 No.23/2021/QD-TTg のリンクからご確認いただけますのでご活用ください。

参照:議決 No.68/NQ-CP(http://ags-vn.com/ja/news/39733.html)
決定
No.23/2021/QD-TTg(http://ags-vn.com/ja/news/39743.html)
関連ニュース:
https://dantri.com.vn/an-sinh/quang-binh-phe-duyet-ho-tro-cho-nhieu-lao-dong-ngungviec-do-covid19-20210810202303503.htm

4.おわりに

 以上、ベトナムのコロナ禍における休業手当についてご紹介いたしました。

 今回調査をしていて、改めてベトナム国内の法令の曖昧さ、また日本における支援制度の充実さを実感しました。ベトナムに住んでいると 周囲の日本人コミュニティや SNS、インターネット上から法令のアップデートやニュースについて情報収集をすることになりますが、その内が実務として機能しているのか、またどのように運用しているのかについての情報については、なかなか知り得ることが難しいように思います。

 弊社では日越弁護士が常駐しており、法務、労務に関するご相談に随時対応、またニュースレターの配信も行っておりますので、 何かお役に立てること がございましたら下記までお気軽にお問合せください。
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