今般、COVID-19の影響を受けた企業の労務に関して、2020年3月18日付でベトナム労働総同盟が労働組合経費の支払期限の延長を規定する公文書No.245/ TLĐを、また、2020年3月25日付で労働傷病兵社会問題省がCOVID-19を原因とする休業期間中の賃金支払等の案内に関する公文書No.1064/LDTBXH-QHLDTLを、各々発行しました。
それぞれの公文書の詳細な内容は、以下の通りです。
1.労働組合経費の支払期限の延長を規定する公文書No.245/ TLĐ
(1) 対象企業
強制社会保険に加入しており、COVID-19の影響により一時休業する労働者の人数が強制社会保険の加入対象となる労働者総数の50%以上の企業が対象となります。
(2) 労働組合経費の支払期限の延長
労働組合経費とは、外資・内資を問わず全ての企業が上部労働組合に対して納付すべき費用であり、労働組合の財務の一部となって労働組合の権利、責任の遂行や労働組合の活動を維持する目的で使用されます(労働組合法No.12/2012/QH13第26条2項、第27条2項)。金額は社会保険料の算定基礎となる給与の2%とされており、毎月1回社会保険料の支払と同じ時期に支払わなければなりません(政令No.191/2013/ND-CP第6条2項)。なお、農業、林業、漁業ならびに塩業に従事する組織及び製造・取引の周期に基づき給与を支払う企業は、毎月又は四半期毎に労働組合経費を支払います(同政令第6条3項)。
今回発行された公文書によると、2020年上半期(1月~6月)分の労働組合経費の支払期限は2020年6月30日まで延長され、2020年6月30日を経過しても引き続きCOVID-19の影響を受け、経済的困難な状態にある場合には更に2020年12月31日まで延長されます。この公文書には具体的な延長手続については明記されていないことから、支払期限の延長を検討している企業は労働総同盟または各省・区の上部労働組合他関連当局による今後の詳細なガイダンス等に留意してください。
2.休業期間中の賃金支払等の案内に関する公文書No.1064/LDTBXH-QHLDTL
(1) 休業に関する現行の労働法の規定
この公文書においても現行の労働法No.10/2012/QH13の規定に言及されており、同法98条によると使用者と労働者の過失の有無に応じ、以下のように処理されます。
ア.使用者の過失による休業:労働者には賃金全額が支払われる。
イ.労働者の過失による休業:本人には賃金は支払われないが、休業する他の労働者には合意に基づき最低賃金以上の賃金が支払われる。
ウ.使用者及び労働者の過失でない客観的理由による休業(例:停電、断水、天災、火災、疫病):合意に基づき最低賃金以上の賃金が支払われる。
また、この公文書では以下の者が上記ウに該当するものとされています。
- 管轄機関の要請により職場復帰していない外国人労働者(例:ベトナム入国後に隔離措置や自宅謹慎の要請を受け、その適用期間中のために職場復帰をしていない日本人駐在員)
- 管轄機関の要請により隔離措置を受け休業している労働者(例:近親者がCOVID-19に感染したとして、隔離措置を受けているベトナム人スタッフ)
- 使用者または同企業・同部署の同僚が隔離措置を受け、または職場復帰していないことが原因で当該企業の全部または一部事業活動が停止し、休業している場合のその他労働者(例:現地法人の社長、管理職者が隔離措置を受けて職場復帰しておらず、休業を余儀なくされた場合の社長、管理職者以外の労働者)
(2) 異なる業務への一時的な異動等
上記(1)に加え、異なる業務への一時的な異動に関する労働法第31条の規定についても案内しています。天災、火災、疫病等の突発的な事象の発生により、または生産、経営上の必要がある場合には、使用者は一時的(労働者の合意がある場合を除き1年間で最大60営業日)に労働契約上の本来の業務とは異なる業務に労働者を異動させることができます。この一時的な異動を実施するためには労働者に対し異動期間を明確にし、少なくとも3営業日前までに通知しなければなりません。賃金は異動後の業務に応じて支払われますが、異動前の賃金水準より低い場合には、30営業日に限って異動前の賃金水準が維持され、それ以降であっても異動前の賃金水準の85%以上でなければなりません。
その他、使用者の経営状況に応じ、労使双方の合意に基づく労働契約の一時的な履行停止や一方的な労働契約の解除、整理解雇といった手段も労働法には規定されています。
以上