みなさんこんにちは。
AGSホーチミン事務所の閑野です。
先日、近所の学校で軍事訓練があったようで、子供たちが校庭で軍人からの手ほどきを受けている姿を見かけました。
日本では、日常生活の中で戦争を連想されるものが少ないため、今では戦争に対する意識はきわめて希薄なものになっていますが、ベトナムでは学校教育の一環で軍事訓練が行われるためか、戦争に対する意識は日本人以上にセンシティブであるように思われます。
軍事力
軍事ウェブサイトのグローバル・ファイアパワーの調査によると、ベトナムの軍事力はASEAN諸国内ではインドネシアに次いで2位、世界ランキングでは17位の実力を誇っているといいます。人口が9,000万人超のうち、予備軍を含めた動員可能人員が5.000万人超とマンパワーに長けています。
しかも、近年は軍事費にかける国家予算も年々上昇しており、2015年には総額43億USDと、昨年比の+9.6%もの費用が投入されている。(ちなみに、シンガポールの軍事費が)
この増加した費用の用途は主に兵器の輸入に用いられており、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が発表した2011年~2015年の5年間における世界の兵器取引量に関する報告書によると、ベトナムが輸入した兵器は2006年~2010年の5年間に比べて7.99倍増加しているといいます。
この取引量の変遷はすさまじく、兵器輸入に関して言えば世界43位から世界8位にまで上昇しているといいます。
兵役制度
ここまでの軍事力を持つベトナムです、当然のごとく兵役制度も顕在しています。ベトナムでは18歳~27歳の成人(女性は配属先が女性を必要としている場合は)が兵役の対象として定められております。
しかし、現状ではその大半が志願兵で成り立っているようで、全ての国民が軍隊に入隊する事はないようです。(もちろん、それでも人数が足りないため、その分は国民を指名して入隊させるようですが。)
また、兵役免除の条件も比較的に緩いようで、基本的に高等教育を受ける学生(主に大学生など)や障害者、そして親族が烈士(ベトナム戦争時代に活躍した兵士のこと)である者に関しては兵役の義務はないようです。
兵役制度の問題点
先ほど述べましたが、ベトナムでは「志願入隊」が多い傾向にあります。彼らが軍に入隊する動機は一見、愛国心の高さからくる国家への忠誠心だと思われがちですが、実際は違うようです。
地元新聞の報道によれば、志願兵の大半が農村部や過疎地域出身の貧困層の青少年が多いようです。つまり、農村部では職がないため、軍に入隊する事で保証された生活を享受しようとする意図があるようです。
もちろん、国のために奉仕するのですから、兵士を含めた家族一同が税金の優遇を受けることになります。
しかし、兵士の多くが貧困層出身で占められるため、それゆえの問題も発生します。
実は、兵役を終えて除隊した兵士の大半が一般企業への就職ができずに路頭に迷ってしまうといったケースが後を絶たないようです。
2010~2014年にかけて軍に入隊していたベトナム人533人を対象に行った就職状況の調査によると、2014年時点で全体のしていることが判明したようです。しかも、残りの2/3に関してもその大半が家業や農業に従事しており、経済的に豊かとはいえないようです。
また、以前のブログ( http://ags-vn.com/ja/weblog/32137.html )でも書いたように現在のベトナムでは学歴社会が進行しているため、大学進学の邪魔になるという理由で頑なに入隊を拒否するケースも増えてきているようです。
中には健康診断書などを偽造し、兵役を逃れようとする者もいるようです。
総括
オバマ大統領がベトナムに訪越し、会談の中で武器の禁輸令が全面的に解除されることが決定されたことはまだ記憶に新しいことです。このことからも、ベトナムは軍事力の強化にますます注力していくことが予想されますが、その一方で前回紹介した病院不足( http://ags-vn.com/ja/weblog/32197.html )のような問題が山積みになっています。
今後、ベトナム政府がこれらの問題をどのようなバランスで着手し、解決していくか。
これこそが最も重要なことのように思えます。
それでは今回は以上になります。次回もよろしくお願いします。 ヘンガップライ。