2020年12月14日、政府は労働関係および労働条件について改正労働法の条項の一部施行細則に関する政令No.145/2020/ND-CP(「政令145号」)を公布しました。政令145号は2021年2月1日より施行されます(第114条1項)。政令145号の施行に伴い、施行日より現行労働法のガイドラインを規定する以下の政令は失効します。改正労働法のそのほかの主要な事項については以下を参照ください。
http://ags-vn.com/ja/news/38559.html
- ストライキ権が認められない事業体のリストおよびストライキ権が認められない事業体の労働者団体の要求処理に関する労働法第 220 条の詳細規定および実施ガイドラインを定める2013 年5月8日付政令41/2013/ND-CP
- 労働契約に関する労働法の一部条項の詳細規定および実施ガイドラインを定める2013年5月10日付政令44/2013/ND-CP
- 労働時間・休憩時間および労働安全・労働衛生に関する労働法の一部条項を詳細に規定する2013年5月10日付政令45/2013/NĐ-CP
- 労働争議に関する労働法の一部条項の詳細規定および実施ガイドラインを定める2013年5月 10日付政令46/2013/ND-CP
- 賃金に関する労働法の一部条項の詳細規定および実施ガイドラインを定める2013年5月14日付政令49/2013/ND-CP
- 職業に関する労働法の一部条項の詳細規定および実施ガイドラインを定める2014年1月16日付政令03/2014/ND-CP
- 家事手伝い労働者に関する労働法の一部条項の詳細規定および実施ガイドラインを定める2014 年4月7日付政令27/2014/ND-CP
- 労働法の一部内容について詳細と施行ガイドラインを規定する2015年1月12日付政令05/2015/ND-CP(「政令05号」)
- 労働法の一部内容について細則とガイドラインを規定する政府の 2015年1月12日付政令05/2015/ND-CP の一部条文を修正、補足する2018年10月24日付政令No.148/2018/ND-CP
- 労働法第 63 条 3 項に規定する職場における民主的規則の施行細則を規定する2018年11月8日付政令149/2018/ND-CP
- 女性労働者に関する労働法の一部条項の詳細規定および実施ガイドラインを定める2015年10月 1日付政令85/2015/ND-CP
- 労働派遣事業の許可、デポジットの納付、および労働派遣の実施可能な業務のリストに関する労働法の第 54 条第 3 項を詳細に規定する2019年3月20日付政令29/2019/ND-CP
内容 |
政令05号 |
政令145号 |
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1. 労働契約 | |||
国営企業の社長として雇用される労働者の労働契約の内容 | 規定なし |
(第5条) 国によって資本の100%が保有されている企業または国によって資本の50%以上が保有されている企業の社長として雇用される者との労働契約の内容 (第6条) 国によって資本の50%以下が保有されている企業または投票権を持つ株式の総数を保有されている企業の社長として雇用される者との労働契約の内容 |
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特殊な業種、職種、業務の場合における労働契約の一方的終了 | 規定なし | (第7条) · 特別な業種、職種、業務は以下の通りである。 a) 航空機乗組員。航空機および航空機のBレベル以上のCRS証明書のメンテナンス・修理担当者。航空管制官。 b) 企業経営者。 c) 海外で運航するベトナム船で勤務している船員。ベトナム企業に派遣され、海外船で勤務する船員。 · 労働者は労働契約を一方的に終了させる場合、使用者に事前に通知しなければならない。 a) 無期労働契約または12ヵ月以上の期間の有期労働契約に基づき労働に従事する場合、少なくとも 120 日前 b) 12 月未満の期間の有期労働契約に基づき労働に従事する場合、少なくとも契約期間の4分の1の期間前 |
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退職手当、失業手当 | (第14条3項c号) 退職手当および失業手当を算出するための就労期間は、就労期間が12ヶ月を満たしていれば年で計算できる。就労期間が 満1ヶ月から6 ヶ月未満であった場合は半年として換算し、満6ヶ月以上就労した場合は 1 年として換算する。 |
(第8条3項) 退職手当および失業手当を算出するための就労期間は、就労期間が 12 ヶ月を満たしていれば年で計算できる。就労期間が 6ヶ月以下であった場合は半年として換算し、6ヶ月を超える場合は1年として計算する。 |
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2. 賃金 | |||
賃金の支払形式 | (第22条1項) 時間に従う給与は実際に勤務した時間(月数、日数、時間数)を根拠にして支払われる。 |
(第54条) 時間に従う給与は労働契約の合意に基づき勤務した時間(月数、日数、時間数)を根拠にして支払われる。 |
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3. 労働規律および物的責任 | |||
就業規則 |
2012年労働法第119条1項に従い、10名以上の労働者を使用する使用者は、文書による就業規則を所持しなければならない。 (政令05第27条) 就業規則の内容 1. 就労時間、休憩時間 2. 職場の規範 3. 職場における安全衛生 4. 使用者の財産、技術機密、ビジネス機密、知的所有権の保護 5. 労働規律の違反行為、労働規律の処理方法と物的責任 |
(第69条) 使用者は、就業規則を公布しなければならず、10 名以上の労働者を使用する場合、就業規則は書面によらなければならない。10名未満の労働者を使用する場合、書面による必要はないが労働規律および物的責任の内容について合意しなけらばならない。 就業規則の内容 1. 就労時間、休憩時間 2. 職場の規範 3. 職場における安全衛生 4. 職場におけるセクシャルハラスメントの予防・対応 5. 使用者の財産、技術機密、ビジネス機密、知的所有権の保護 6. 労働契約と異なる業務への一時的な異動 7. 労働規律の違反行為、労働規律の処理方法 8. 物的責任(損害賠償について) 9. 労働規律処分の権限を有する者 |
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労働規律処分の手順、手続 | 政令05号第30 条を修正、補足する。2018年10月24日付政令No.148/2018/ND-CP第1条12項によると、第 30 条は次のとおり修正される。 1. 違反行為が起きた時点において労働者の労働規律に違反する行為を発見した場合には、労働規律処分会議を開催するために、使用者は違反記録を作成し、職場の労働団体の代表組織、労働者が18歳未満の場合には父、母または法的代理人に通知する。 2. 違反行為が起きた時点よりも後に使用者が労働規律に違反する行為を発見し、労働者の違反を証明できる根拠が十分にあり、規律処分の時効内である場合には、次のように実施 する。 a) 使用者は、労働規律処分会議の内容、時間、場所を労働法第123 条第1項b号、c号に規定する参加構成員に対して通知し、各構成員が会議の開催までに通知が受けられるよう保証し、通知された構成員の出席がある場合に労働規律処分会議を開催する。 b) 使用者の通知を受け取った場合、通知を受け取った日から最大 3 営業日以内に、労働法第123条第1 項b号、c号に規定する参加構成員は会議への出席を確認しなければならない。参加できない場合には、使用者に通知し理由を明示しなければならない。 労働法第123条第1項b号、c号に規定する参加構成員のいずれかが会議への出席を確認しないとき、適切ではない理由を提示したとき、または出席の確認を行ったが会議に来なかったときは、使用者は労働規律処分会議をそのまま開催する。 3. 労働規律処分会議は記録を作成されなければならず、会議の終了前に参加した各出席者の承認を得なければならない。記録は会議に出席者の完全な署名がなければならない。会議の出席者の誰かが記録に署名しない場合には理由を明確に記載しなければならない。 4. 使用者側の労働契約締結者は、労働者に対して労働規律処分の決定を下す権限を有する。 5. 労働規律処分の決定は、労働規律処分の時効の期限内または労働法 124条に従い延長された時効の期限内に発行されなければならい。労働規律処分の決定は、労働者、労働者が18歳未満の場合には父、母または法的代理人に送付されなければならない。 |
(第70条) 1. 使用者は、違反行為を発生する時点に労働者の労働規律の違反行為を発見する場合、違反議事録を作成し、基礎レベル労働者代表組織または労働者の法的代表者に通知する。使用者は、違反行為を発生した後で、労働者の労働規律の違反行為を発見する場合、労働者の故意・過失を立証する為、 証拠の収集を実施する。 2. 労働規律処分の時効内に、使用者は以下の通りに労働規律処分の会議を実施する。 a) 使用者は、労働規律処分の会議開催の少なくとも5営業日前に、労働規律処分会議の内容、時間、開催住所について参加構成員に対して通知する。その通知の中で労働規律処分を受ける労働者の名前、労働規律処分を受ける違反行為を明記する。 b) 参加しなければならない各構成員のうち通知された時間、住所に従って、会議に参加できない者がいる場合、労働者と使用者は会議の時間、場所を変更することを合意する。両者で合意されない場合、使用者が決定するものとする。 c) 使用者は通知した時間、住所に従って、労働規律処分の会議を開催する。参加しなければならない各構成員のうちである構成員が欠席しても会議を開催する。 3. 労働規律処分会議の内容は記録を作成されなければならず、会議の終了前に参加しなければならない各出席者の承認を得なければならない。記録は会議出席者の署名がなければならない。記録に署名しない場合には名前、理由を明確に記載しなければならない。 4. 労働法第123条第1項および第2項に規定されている労働規律処分の時効内に、労働規律処分の権限を有する者は、労働規律処分の決定を公布し、労働法第122条第1項b号、c号に規定する参加する必要のある構成員に送付する。 |
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そのほか、改正労働法において「詳細は政府が定める」といった内容の条項がいくつか置かれていますが、その詳細を規定するもの例として以下のものがあります。改正労働法との対照は以下の表を確認ください。
1.就業規則
就業規則の作成義務、内容、労働者への通知方法については改正労働法第118条に規定されているところ、その詳細を規定するものとして政令145号では労働者10名未満の場合において書面による公布は必要でないことや、就業規則の記載すべき内容の具体的、詳細な事項が規定されています。
2.物質損害の賠償処理の手続
労働者が会社の資産に損害を与えた場合の賠償処理の手続が具体的に規定されています。
3.職場におけるセクシャルハラスメント
改正労働法では職場におけるセクシャルハラスメントの定義が新しく置かれましたが、政令145号では更に具体的な行為類型、行為態様が規定されています。
【参考:改正労働法と政令145号の対照表】
改正労働法 |
政令145号 |
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就業規則 | 第 118 条 就業規則 1. 使用者は、就業規則を公布しなければならず、 10 人以上の労働者を使用する場合、就業規則は書面によらなければならない。 2. 就業規則の内容は、労働に関連する法令および関連する法令に反してはならない。就業規則は、次の主たる内容からなる。 a) 労働時間、休憩時間 b) 職場における秩序 c) 労働安全・衛生 d) 職場におけるセクシャルハラスメントの予防・対応、職場におけるセクシャルハラスメント行為の処分の手順、手続 e) 使用者の財産・営業上の秘密・技術上の秘密・知的所有権の保護 f) 労働契約と異なる業務に一時的に労働者を異動する場合 g) 労働者の労働規律違反行為および労働規律処分の形式 h) 物的責任 i) 労働規律処分の権限を有する者 3. 就業規則を公布または修正・補足する前に、使用者は、 基礎レベル労働者代表組織がある場合は、 基礎レベル労働者代表組織の意見を参考にしなければならない。 4. 就業規則は労働者に通知され、主要な内容は職場の必要な場所に掲示されなければならない。 5. 政府は、 本条の詳細を定める。 |
第68条 就業規則 労働法第118条の就業規則は以下の通り規定される。 1. 使用者は、就業規則を公布しなければならず、10 名以上の労働者を使用する場合、就業規則は書面によらなければならない。10名未満の労働者を使用する場合、書面による労働規則を公布する必要はないが、労働契約に労働規律、物的責任の内容について合意しなけらばならない。 2. 就業規則の内容は、労働法令および関連する法令に反してはならない。就業規則の主な内容は以下の通りに規定される。 a) 労働時間、休憩時間:1日、1週間の通常の就労時間、シフト制の1シフトの就労時間、シフト制の1シフトの就労開始および終了時間、時間外労働(もしあれば)、特別なケースの時間外労働、休憩時間以外の休憩、シフト交替の休息、週休、年次休暇、慶弔休暇、無給休暇。 b) 職場における秩序:仕事範囲、勤務時間内の往来、ビジネスマナー、服装、使用者の仕事分担や異動の遵守。 c) 労働安全・衛生:労働安全・衛生、災害予防。個人を保護する装備、職場における労働安全・衛生保障の設備を使用し、保管する。職場における衛生、消毒および殺菌についての内規、順序、保障方法各規定。 d) 職場におけるセクシャルハラスメントの予防・対応、職場におけるセクシャルハラスメ ント行為の処分の手順、手続。女性労働者に対する対策およびジェンダーの平等の保障について政府の規定に基づいて使用者はセクシャルハラスメントの予防・対応。 e) 使用者の財産・営業上の秘密・技術上の秘密・知的所有権の保護。財産・営業上の秘密・技術上の秘密・知的所有権リスト。財産、秘密を保護するために適用される責任、方法。財産、秘密に侵害する行為等 。 f) 労働契約と異なる業務に一時的に労働者を異動する場合:労働法第29条1項に基づいて使用者が生産上または経営上の必要により労働者を労働契約と異なる業務に一時的に異動させることができる場合を具体的に規定。 g) 労働者の労働規律違反行為および労働規律処分の形式:労働者の労働規律違反行為、違反行為の相当労働規律処分の形式を具体的に規定。 h) 物的責任:道具・設備を損壊し、またはその財産に損害をもたらすそのほかの行為より賠償しなければならない場合。道具・設備・財産または使用者が引き渡したそのほかの財産を紛失し、または許可された基準を超えて物資を浪費した場合。損害の程度に応じた相当額の賠償。 i) 労働規律処分の権限を有する者:労働法第18条3項に規定される使用者側で労働契約の締結権限がある者、または使用者によって就業規則で具体的に規定される者。 3. 労働法第63条の規定に基づいて就業規則を公布または修正・補足する前に、使用者は、基礎レベル労働者代表組織がある場合は、基礎レベル労働者代表組織の意見を参考にしなければならない。 4. 就業規則は公布された後で、各基礎レベル労働者代表組織に送り、労働者に通知しなければならない。同時に、主要な内容は職場の必要な場所に掲示されなければならない。 |
物的責任・損害賠償 | 第 130 条 損害賠償の処理 1. 損害賠償額の検討、 決定は、 労働者の故意・過失、 実際の損害の程度、 実際の家庭の事情、 人格および財産に基づかなければならない。 2. 政府は、損害賠償の処理の手順、 手続、 時効を定める。 |
第71条 損害賠償処理の手順および手続 労働法第130条2項の損害賠償処理の手順および手続は、次の通りに規定される。 1. 財産の損害を引き起こす労働者の行為を発見するとき、 使用者は労働者にその事件について書面で報告するように求める。 2. 本政令第18条に定める損害賠償処理の時効内に、使用者は次の通りに損害賠償処理の会議を開催するものとする。 a) 損害賠償処理の会議開催の少なくとも5営業日前に、使用者は参加構成員に通知しなければならない。参加構成員は労働者、15歳未満労働者の法的代表者、労働者が構成員である基礎レベル労働者代表組織、価値の評価者(もしあれば)を含む。通知の内容には、損害賠償処理会議開催の時間、場所、損害賠償を処理される者の名前および違反行為を明確に記載しなければならない。 b) 本条項a号に定める参加者が通知された時間または場所に出席できない場合、労働者および使用者は会議の時間または場所の変更に合意するものとする。 両者が合意に達することができない場合、使用者は決定するものとする。 c) 使用者は、本条項a号およびb号に定める通知された時間および場所で、損害賠償処理会議を開催する。 本条項a号に定める会議に出席する必要のある参加者が欠席しても、使用者は法律に従って損害賠償処理会議を開催するものとする。 3. 損害賠償処理会議の内容は記録を作成されなければならず、会議の終了の前に本条項第2項1号の参加しなければならない各出席者の承認を得なければならない。記録は会議に出席者の署名がなければならない。 記録に署名しない場合には理由を明確に記載しなければならない。 4. 損害賠償処分の決定は、損害賠償処理の時効内に公布しなければならない。損害賠償処理の決定には、損害の程度 、損害原因、賠償の程度 、損害賠償の期限および形式を明記しなければならない。そして、本条第2項a号に定める参加する必要のある構成員に送付する。 第72条 損害賠償処理の時効 労働法第130条2項の損害賠償処理の時効は、次の通りに規定される。 1. 損害賠償処理の時効は、労働者の財産損害をもたらす違反行為が発見した日から数えて4ヶ月である。 2. 労働法第122条4項に定める期間内にある労働者に対し、損害賠償処理を行ってはならない。 3. 労働法第122 条4項に規定された期間が終了した際 、もし時効が満了している場合、またはもし処理時効が残っているが 60 日未満である場合、損害賠償処理の時効を延長できるが、上記の期間が終了した日から 60 日を超えてはならない。 |
職場におけるセクシャルハラスメント | 第3条9項 「職場におけるセクシャルハラスメント」とは、職場において、ある者のほかの者に対する、本人の意に反するまたは同意のない、性的な性質を有する言動をいう。職場とは、合意または使用者の指示に基づき、労働者が実際に労働に従事する場所をいう。 |
第84条 職場におけるセクシャルハラスメント 1. 労働法第3条9項に定めるセクシャルハラスメントは、仕事に関する利益を得るため性的関係の交換を要望、要求、示唆、脅迫、強制するなど形式で発生する可能がある。または性的関係の交換が目的でない行為であっても、職場環境を不快で不安にさせ、セクハラ被害者の身体的、精神的、仕事および生活の効果を引き起こす行為をいう。 2. 職場におけるセクシャルハラスメントに当たる行為としては、次の各行為を含む。 a) 性行為を暗示するまたは性的がある行動、ジェスチャー、接触等を含む身体的な行為 b) 直接口頭、電話または電子機器で性行為を暗示するまたは性的がある内容を含む発言 c) ボディランゲージ。電子的手段を介して直接、性的内容または性的活動に関連する視覚資料を表示、展示する非言語的行為 3. 労働法第3条9項に定める職場とは、合意または使用者の指示に基づき、労働者が実際に労働に従事する場所をいう。社会活動、セミナー、ワークショップ、正式な出張、食事、電話での会話、電子通信のコミュニケーション、住居から職場の乗物などの仕事関連の空間または場所、および会社によって提供される住居、指定される別の場所を含む。 |
以上