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皆様こんにちは。
AGSホーチミン事務所の会計・税務部でインターンをしている川島と申します。
Vol.1 「ベトナムの整形事情」
Vol.2 「ベトナムの物価上昇率と最低賃金」
Vol.3 「日本とベトナムの消費税法の共通点・相違点①」
Vol.4 「日本とベトナムの消費税法の共通点・相違点②」
とこれまで執筆してきました。
今回は外国契約者税 (以下、FCT)についてお話しします。FCTはベトナム特有の税金の一つで、日本人には馴染みの薄い税金であります。このブログを通して少しでもFCTに対
する基本的な理解が深まれば幸いです。なお、例外的な取り扱いやその他詳細・細則については本稿では取り上げませんのでご了承下さい。
目次
- FCTとは?
- FCTの計算方法
- まとめ
1.FCTとは?
FCTとは、外国の企業や個人 (以下、外国契約者)がベトナムの企業や個人 (以下ベトナム契約者)との間の契約に基づいて、ベトナム国内でサービスの提供を行った際に生じる所得に課される税金で、その負担者は原則的には外国契約者であります。FCTは法人税または個人所得税 (CITまたはPIT)と付加価値税 (VAT)から構成され、一般的にはベトナム契約者が対価の支払い時にFCT部分について源泉徴収する形で代理申告・納税を行います。FCTを理解する際に留意する点を2点紹介します。まず1つ目は、FCTは外国契約者がベトナム国内に自社の支店や工場といった恒久的施設 (以下PE)を有しているかを問わない点です。日本とベトナムとの間で締結された租税条約では、ベトナム国内にPEがなければ企業の利得に対して課税することが出来ないと規定されています。しかし、ベトナム国内法ではFCTとしてCITが課されます。他の留意点としては、FCTはあくまでベトナム国内でサービス提供を伴う取引を課税対象としています。このため、物品の輸出入のみの取引は、FCTの対象にはなりません。では、どのような取引がFCTの課税対象となるのでしょうか?FCTの対象となる代表的な取引としてはコンサルティングサービスの提供が挙げられます。次に具体的な数値を用いてFCTがどのように算定されるのかを見ていきます。
2.FCTの計算方法
FCTの算定方法は3つありますが、多くの外国契約者は直接法を選択します。直接法は、みなし税率を用いてFCT額を算定する方法で、CITとVAT部分を別個に計算します。ここでは計算を簡略にするため、外国契約者が外国契約税を負担する契約条件であると仮定します。この場合には、FCT算定式は下記のようになります。今、日系企業Aがベトナム法人Bに対してベトナム国内でコンサルティングサービスを提供したとします。また当該サービスの契約金額は、10,000円であるとします。以下が取引を簡略した図です。
FCTはそのサービスの性質により適用される税率が異なります。詳細については省略しますが、今回のような取引の場合には、コンサルティングサービスは一般サービスの提供に該当します。
FCT課税対象の取引 | みなしVAT率 | みなしCIT率 |
一般サービス | 5% | 5% |
貸付利息 | - | 5% |
レストラン、ホテル、カジノの管理サービス | 5% | 10% |
機械、設備のリース | 5% | 5% |
機械や設備の供給を伴うサービス | 3% | 2% |
有価証券の譲渡 | - | 0.1% |
デリバティブ | - | 2% |
ロイヤリティー | - | 10% |
上記の表は各取引ごとに適用される税率を一部抜粋してまとめたものです。コンサルティングサービスは一般サービスに該当するため、FCTのVAT部分に関しては5%、CIT部分に関しても5%の税率を適用することで当該サービスにかかるFCT額を求めることが出来ます。では、上記の算定式、税率を参考に今回の取引でB社が代理申告・納税しなければならないFCT額を計算します。
この計算結果から、B社はFCTとして975円をA社に対する支払いから源泉徴収し、それをベトナム国内の税務当局に納めます。A社は10,000円の契約金額から975円が徴収された9,025円を得ることになります。
3.まとめ
今回はベトナムのFCTについてお話ししました。FCTの基本的なイメージとしては、外国契約者が受け取るサービス対価に対して源泉徴収される形で税金がかかるというイメージを持たれると、その仕組みを理解する際に役に立つと思います。今回はこの辺で失礼させていただきます。
なお、当該ブログは信頼できる情報を基に作成していますが情報の正確性・完全性を保障するものではありません。
参考文献
日刊工業新聞:
https://www.eyjapan.jp/services/specialty-services/globa
l-support/emerging-markets/topics/pdf/2015-02-25-nikkan-07.pdf
日本貿易振興機構(JETRO):
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2016/8786a13e8c75fd56/rpvnqa201607r.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2017/a3ebead4573f1dba/rp-vn-onthespot201703rv.pdf
PWC
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