皆さんこんにちは。
AGSホーチミン事務所の閑野です。
先日、ベトナムに初めて駐在されるお客様にベトナムのゴミ事情について尋ねられましたので、今回はベトナムのゴミ事情についてご紹介したいと思います。
ベトナムの家庭ごみ回収方法
ベトナムで家庭ごみを出す際に気をつけるルールは特にありません。具体的にいえば、
- ゴミの分別の必要なし
- 行政の指定するゴミ袋なし
- ゴミ出しの場所や時間の規定なし
といった流れになります。
あとは、街を巡回する清掃員がゴミを収集車に集積し、ゴミ処理場まで運搬、処理され、埋立地に投棄される形になっています。
ちなみに、ベトナムでは「ポイ捨て」が常習的に行われるため、清掃員はゴミを回収するのと同時に町の清掃も兼任しております。
それでも路上からゴミが消える事がないため、「ポイ捨て」多発地域に行政が監視カメラを設置する、といった対策を立てているようです。
ゴミ処理能力のキャパシティ
経済成長著しい新興国であるためか、ベトナムのゴミ排出量は年々増加傾向にあります。特にホーチミン市のゴミの量は膨大なことで有名で、2016年現在で1日の総排出量が7,500tから8,000tにも上るそうです。
しかも、それでも年5%の割合で年々増加していくことが予想されており、日に10,000tを越す日もそう遠くないと地元新聞は報じています。
このようにゴミの量が増加傾向にあるベトナムですが、やはりゴミの量が増してくると「ゴミをいかにして処理するか」という点が懸念されるようになります。
事実、ベトナムのゴミ処理機能はすでに限界に達している事が近年問題視されており、大きな社会問題となっています。
問題の要因は
ではどのような点でベトナムのゴミ処理機能は限界を迎えているのでしょうか?まず1点目が「ゴミ処理施設の不足」です。
驚くことに、現在ホーチミン市近郊で「ゴミ処理施設」として稼動している施設は、(2014年までの新聞記事を見る限りでは)ホーチミン市南方に位置するビンチャイ郡のダーフオック ゴミ処理場1箇所のみとなっているようです。
しかも、同施設の処理能力は本来は1日に3,000tとなっているようですが、排出されるゴミの量が多いため、1日にその倍の6,000tの処理を余儀なくされているといいます。
2点目が「未熟なゴミ処理技術」です。
ベトナムはまだ「ゴミを処理する」といった認識が芽生えて間もないため、ゴミ処理、特に焼却処理技術を培うだけの土台がない状態にあります。
先進国では高い火力でゴミを焼却し、ゴミの総量を減らして一連のプロセスを効率化するシステムが取り入れられていますが、この技術が浸透していないベトナムではゴミをそのまま埋立地に埋めるしか手立てがありません。
地元新聞の記事によれば、現在ベトナムでは約75%ものゴミがそのままの形で埋め立てられているというのだから驚異的です。(ちなみに日本の「ゴミの焼却率」は約98%。)
このままでは埋立地が枯渇するだけでなく、環境汚染にもつながりかねません。(実際、これが原因でホーチミン市近郊にあったゴミ処理場が2箇所閉鎖されている。)
3点目は「国民のゴミの分別意識が希薄」な点です。
ゴミを分別する先進国では、ゴミ処理場に運搬された状態で分別されているため、「再生可能ゴミ」や「エネルギー資源ゴミ」を選別して処理するゴミの量を減らす事ができるといいます。
しかし、冒頭でも触れましたように、現状のベトナムではこの意識はほぼ皆無となっており、資源として再利用できる多くのゴミが無駄に処理されているのが現状です。
解決編
現在、ベトナム政府はこれらの問題を解決するためにも、国民に3R(リサイクル・リユース・リデュース)を浸透させるプロジェクトを環境省が検討しているといいます。同省の調査によれば、市内の廃棄物の90%から95%が再利用可能なゴミである事が分かっているため、この3Rが普及すればベトナムのゴミ事情も一気に解決に向かう事が期待できます。
また、技術面に関してもJICAなどの機関と提携をする事で「ゴミ処理機能」と「発電機能」を兼ね備えた施設を建設していくことで、より効率的な方法を模索していく姿勢をみせています。
ベトナムのゴミ処理事情が改善されるまでには相当の時間がかかる事が予想されますが、しかし着実に一歩ずつ改善される方向に向かっていることが伺えます。
今後のベトナムがどのような発展を歩むか、非常に興味深いですね。
それでは本日は以上になります。次回もよろしくお願いします。
ヘンガップライ