現在、支払口座の開設・利用、非現金決済サービス、決済仲介サービスについて規定する法令として、非現金決済に関する政令No.101/2012/ND-CP(「政令101」)がありますが、ベトナム国家銀行(中央銀行)は政令101に代わる新たな政令草案を策定しています。以下では、現行法令下における決済仲介サービスの外資規制、外資規制を含む政令草案の主要な事項について説明します。政令改正の背景には、外国投資家による決済分野における操作を防止し、金融活動の安全性を確保することにあるとされています。政令改正は草案段階であり、確定情報ではないためご留意ください。
1. 現行の決済仲介サービスの外資規制決済仲介サービス(Payment intermediary services)は、電子支払機関の提供、支払サービス支援、国家銀行が規定するその他の決済仲介サービスが含まれます(政令101第15条1項)。銀行ではない組織が決済仲介サービスを提供するための条件として、最低500億VNDの定款資本、法定代表者および社長が事業管理における職務経験を有していることを従業員が職務に熟練していることは規定されていますが、外資規制に関する条件は明確に規定されていません。
この点について、決済仲介サービス活動はOther financial service not elsewhere classified(VSIC 6499)に分類され、WTOコミットメントにおいて外国投資家に未開放の事業分野とされています。すなわち、外国投資家がこの事業分野に投資する際には、その都度、所轄当局からの承認を取得する必要があります。
なお、外国投資家による出資がされている決済仲介サービスを提供する企業としては、Payoo(NTT Dataが64%出資)、VNPT EPAY(UTC Investment Co., Ltd(韓国企業)が65%出資)、1Pay(True Money(タイ企業)が90%出資)などがあります。
2. 政令草案の主要な事項(1) 国際決済の概念の修正
政令101では、国際決済は、当事者の少なくとも一方がベトナム領域外に支払口座を保有している当事者らによって行われる決済を意味するとされていますが(政令第4条2項)、政令草案では、支払者、送金者又は受益者にサービスを提供するために、ベトナムにおける決済サービス提供組織と外国の決済サービス提供組織の間で実施される決済取引であるとしています。
(2) 電子マネーに関する規定の補足
政令101には電子マネーに関する規定はありませんが、改正草案では電子マネーをプリペイドカード(Prepaid Card)、電子財布(Digital Wallet)、モバイルマネー(Mobile Money)を含むとし、電子マネーの提供者は、プリペイドカードを提供する銀行、外国銀行支店、電子財布・モバイルマネーの決済仲介サービスを提供する組織であるとしています(改正草案第3条12項から15項)。
(3) 決済仲介サービスの補足
政令101では決済仲介サービスを提供する組織に対しては上記1の条件の他に詳細な権利、義務、サービス範囲等の規定はありませんが、改正草案においてはサービス範囲、活動原則、決済契約などの規定が補足されています。
(4) 許認可手続の改正
改正草案においては、電子決済サービス(Electronic clearing service)、電子財布サービス(Digital wallet service)、モバイルマネーサービス(Mobile money service)、ファイナンシャルスイッチサービス(Financial swich servicde)を提供する組織は国家銀行から許可を取得する必要があるとされています。
また、現金回収決済支援サービス(Support service of cash collection and cash payment)、電信送金支援サービス(Support service of wire transfer)、ペイメントゲートウェイサービス(Payment gateway service)は国家銀行からの許可取得は要求されませんが、サービス提供者は商業銀行、外国銀行支店と提携する必要があります。
(5) 決済仲介サービスの外国投資家に対する規制
・投資の形式:決済代行サービスの提供に関する中央銀行の許可を取得し
ている組織への出資、株式、持分の取得による。
・外国投資家の最大出資比率(直接所有および間接所有(特別関係人又は投資
信託を介して株式又は持分を保有する場合)を含む):定款資本の49%。
・中央銀行の許可を取得している決済代行サービスを提供する組織が複数
の事業分野を実施し、その事業分野について外国投資家の出資比率の規
制がある場合、その出資比率の規制を遵守しなければならない。
以上