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【ブログ】ベトナムと日本の婚姻制度・離婚制度(2)

“○○件数”は意外と多い

皆様こんにちは!

AGSリーガルチームの杉原です。

216,798

突然ですが、この数字は、厚生労働省より公表されました平成28年度「人口動態総覧」における“ある項目の件数”です。

皆様おわかりでしょうか?

…実はこの数字、日本における平成28年度の“離婚件数”です(*1)

同年度の婚姻件数は620,531件であり、離婚件数が同件数の3分の1以上であることに照らすと、現在の日本では“離婚”がとても身近な存在 となっています。

そこで、今回のブログでは、ベトナム及び日本の“離婚”に関する情報を皆様にお届けしたいと思います。

テーマは、「ベトナムと日本の離婚制度(制度概要編)」です。

先週のブログより始まりました「ベトナムと日本の婚姻制度・離婚制度」シリーズの第2弾となります。

「離婚の前に“婚姻・結婚”について知りたい!」という方は、第1弾「ベトナムと日本の婚姻制度」をご一読いただけますと幸いです。

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離婚の制度概要-日本編-

日本の法律では、離婚には協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚の4種類があります(*2)

協議離婚とは、夫婦の協議による離婚をいいます。

調停離婚・審判離婚・裁判離婚とは、いずれも家庭裁判所が関与する離婚となります。

協議離婚の要件は、離婚意思の合致(民法第763条)と離婚の届出(同法第764条、第739条)とされています。また、ここにいう“離婚意思”とは、法律上の婚姻関係を解消する意思で足りるとするのが判例(*3)の立場と考えられています。“婚姻意思”の場合と異なり、ここではあまり意思の内容は重要とされていません。

他方で、日本で離婚の訴えを提起しようとした場合、はじめから“訴訟”により離婚の成否を争うことは認められておらず、まずは調停による解決を試みる必要があります(*4)

この制度を「調停前置主義」といいます。この制度の趣旨は、夫婦関係という家庭内の問題をできるだけ当事者間の話し合いで解決することにあります。

こうしてみると、以下の点が日本の離婚制度の特徴であると考えられます。
  • 離婚の種類につき、夫婦のみでの完結が可能な離婚(協議離婚)と、家庭裁判所が関与する離婚(調停離婚・審判離婚・裁判離婚)が定められている。
  • 解決の方法としては、夫婦の意思を重んじ、裁判による解決はあくまで最終手段である。

離婚制度概要-ベトナム編-

続いてベトナムの離婚制度をご紹介します。

ベトナムでは、婚姻家族法により「離婚」の定義がなされています。

同法第3条第14項によると、「離婚とは、裁判所の確定判決、決定に基づいて夫婦関係を終了させることをいう」とされています。

離婚の種類については、「協議離婚」と「一方側の請求による離婚」の2種類が定められています(*5)

ここで注意が必要なのが、ベトナム法上の「協議離婚」は、日本の民法上の「協議離婚」と意味が異なることです。

ベトナムにおける「協議離婚」は、「離婚」の定義からもわかるように、夫婦という二当事者間の協議によりなされるのではなく、必ず「裁判所の確定判決、決定に基づ(く)」ものでなければなりません。

また、ベトナム婚姻家族法では、“離婚請求後”と“離婚請求状の受理後”にそれぞれ和解による解決を試みようとする制度が設けられています(*6)。同法が、審理の前に和解制度を複数設けていることからすれば、一次的には和解による解決を奨励していると考えられます。

こうしてみると、以下の点がベトナムの離婚制度の特徴であると考えられます。

・離婚の種類については複数あるが、いずれも裁判所が関与する形態となっている。

・解決方法としては、和解による解決が望ましいと考えられている。

まとめ

両国の離婚制度の特徴をまとめると、以下のようになります。

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両国の制度を比較すると、離婚の種類については裁判所の関与の有無という点で違いがあります。他方で、解決方法については、日本では調停、ベトナムでは和解という方法での解決を重視していることからすると、両国ともに夫婦間での解決を主眼に置いていることがわかります。

以上、ベトナム・日本における離婚制度についてのご紹介でした。

次回予定のテーマは、「ベトナムと日本の離婚制度(離婚原因編)」です。お楽しみに!


*1 厚生労働省:第1表_人口動態総覧

(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei16/dl/03_h1.pdf)

*2 協議離婚(民法第763条)、調停離婚(家事事件手続法第244条、第257条、第268条)、審判  離婚(家事事件手続法第284条)、裁判離婚(民法第770条、第771条、人事訴訟法第2条第  1号など)

*3 最判昭和38年11月28日民集17巻11号1469頁

*4 家事事件手続法第244条、第257条

*5 協議離婚(べトナム婚姻家族法第55条)、一方側の請求による離婚(同法第56条)

*6 離婚請求後の和解(グラスルーツ和解(べトナム婚姻家族法第52条))、離婚請求状の受理後の和解(同法第54条)

婚姻の件数と比較すると、よりどの位身近かになっているか分かると思います。

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