Contents
I. はじめに
皆様こんにちは!AGSリーガルチームの杉原です。
ベトナムに来て驚くことの一つに、“日本人の多さ”があります。
ベトナムに来る前にも日本人の多さについてはいろいろな人から聴いていたのですが、想像を遙かに超えた多さです。ベトナムでの生活を始めた直後こそ、日本人を見掛けたり日本語の話し声を聞いたりすると「あっ!日本人だ!」と驚いていましたが、今では全く驚かなくなりました。ベトナムで多くの日本人が生活しているということは、ベトナム人にとって日本人と関わる機会が多く存在するということに繋がると思います。関わり方は様々だと思いますが、その中には“恋愛関係”を築くケースも少なからずあるのではないでしょうか。
本ブログが、今いる又はこれから誕生する前途洋々な日越カップルの皆様の一助となれば幸いでございます。
さて、今回のブログのテーマは、「ベトナムと日本の婚姻制度(ベトナム人と日本人の婚姻編(2))」です。前回のブログでは、ベトナム人と日本人の婚姻手続のうち、日本側で先に婚姻手続を行う【日本式】と呼ばれている手続をご紹介致しました。今回のブログでは、ベトナム側で先に婚姻手続を行う、いわゆる【ベトナム式】の手続を紹介したいと思います。
*今回のブログは「ベトナムと日本の婚姻制度・離婚制度」シリーズの第6弾となります。
【リンク】
第1弾 ベトナムと日本の婚姻制度
第2弾 ベトナムと日本の離婚制度(制度概要編)
第3弾 ベトナムと日本の離婚制度(離婚原因編)
第4弾 ベトナムと日本の離婚制度(請求権者編)
第5弾 ベトナムと日本の婚姻制度(ベトナム人と日本人の婚姻編)
II. ベトナム式
それでは、ベトナムで先に婚姻手続を行う【ベトナム式】手続を紹介いたします。同手続については、在ベトナム日本国大使館のHPで紹介されています[i]。
ベトナムで婚姻登録手続を行う場合、日本国籍者は、「婚姻要件具備証明書」と「健康診断書」を用意し、人民委員会へ提出する必要があります。これらの書類は、日本国内の法務局や役場・日本国大使館で取得できるものではありますが、上記機関への提出に先立ち、関係機関での認証手続を要します。認証とは、当該文書が作成者の意思に基づいて作成されたことを公の機関が証明することをいいます。
上述の書類の用意・認証・提出を含む婚姻登録に至るまでの各手続の流れは以下のようになります。
*【青色】がベトナム(大使館・領事館含む)での手続が必要となるものをあらわし、【オレンジ色】が日本(大使館・領事館含む)での手続が必要となるものをあらわしています。
1. 婚姻要件具備証明書の申請手続
同証明書については、日本の地方法務局や本籍地の市区町村役場又は日本の在外公館で取得可能です。在ベトナム日本国大使館で申請する場合は、申請者本人が出頭し、以下の書類を提出する必要があります[ii]。- 証明書発給申請書(在ベトナム日本国大使館に備え付け)
- パスポート
- 戸籍謄(抄)本(発行日から3ヶ月以内のもの)
- 婚姻相手の身分証明書
- 公安局発行の婚姻相手の婚姻状況証明書(証明書の種類により不要な場合あり)
2. 婚姻要件具備証明書等の認証手続
婚姻要件具備証明書及び健康診断書については、以下の認証・翻訳の取得等の手続が必要となります。各書類につき、手続を確認してみましょう。[婚姻要件具備証明書(日本国内で発給を受けた場合)]
ⅰ 日本国大使館で「公文書上の印章証明書」(婚姻要件具備証明書に押印されている公印が真正なものであることを証明するもの)の発給を受けます。
ⅱ ベトナム外務省領事局で認証を受けます。
ⅲ 地方人民委員会各区事務所でベトナム語への翻訳を取得します。
[婚姻要件具備証明書(日本国大使館で発給を受けた場合)]
ⅰ ベトナム外務省領事局で認証を受けます。
ⅱ 地方人民委員会各区事務所でベトナム語への翻訳を取得します。
[健康診断書(日本の公立総合病院で発給を受けた場合)]
ⅰ 日本国内の公証人役場で公証を受けます。
ⅱ ⅰの公証人役場が所属する地方法務局で証明書(上記ⅰの公証が有効なものであることの証明書)の発給を受けます。
ⅲ 日本の外務省又は当館で「公文書上の印章証明書」(上記ⅱの地方法務局発給の証明書に押印されている公印が真正なものであることを証明するもの)の発給を受けます。
ⅳ 上記ⅲにおいて、日本の外務省で公文書上の印章証明書の発給を受けた場合、在日ベトナム大使館で認証を受け、当館で公文書上の印章証明書の発給を受けた場合、ベトナム外務省領事局で認証を受けます。
ⅴ 地方人民委員会各区事務所でベトナム語への翻訳を取得します。
3. ベトナム地方人民委員会司法局での婚姻登録手続
夫婦となる者のうち1人が、ベトナム国籍者の本籍のある区・県人民委員会の登録申請窓口に出頭し、日本国籍者が用意した以下の書類を提出します。- 婚姻登録申請書
- 日本国籍者の婚姻要件具備証明書(発行日から6ヶ月以内/証明・認証手続済)
- 健康診断書(発行日から6ヶ月以内/証明・認証手続済)
- 当事者のうち日本国籍者の旅券(原本提示・コピー提出)
[ⅲ]。同証明書交付当日は、婚姻当事者の2人ともが人民委員会に出頭する必要があります。
以上の手続により、ベトナムでの婚姻成立が認められます。
おめでとうございます!
4. 日本の役場・大使館への婚姻届の提出
ベトナムでの婚姻手続が終了すれば、次に行わなければならないのは、婚姻成立の事実を日本の戸籍にも反映させることです。同手続については、大きく分けて、日本の役場に届け出る場合と、日本国大使館へ届け出る場合の2つがありますが、本稿では【ベトナム式】の手続で多く採用されている日本国大使館へ届け出る場合を説明します。届出の方法としては、日本人配偶者本人が出頭し、届出書の記入(署名・捺印)及び以下の必要書類を提出する必要があります。
- 婚姻届(大使館備え付け) 2通~3通
- 日本人当事者の戸籍謄(抄)本 2通
- 上記3にて発行の婚姻登録証明書及び同和訳文 2通~3通
- 婚姻相手の国籍を証明する書類(出生証明書又はパスポート)及び同和訳文 2通~3通
おめでとうございます!!
III. おわりに
2週にわたって、ベトナム人と日本人の婚姻手続きについてご紹介しました。私が【日本式】・【ベトナム式】の両手続を調査した上で疑問に思ったのが、「どちらの方式により手続を行えば良いのか?」ということです。改めて、【日本式】と【ベトナム式】を比べてみると、いずれの方式によっても日本・ベトナム両国で揃える書類があり、これら書類の提出先も一つではありません。すなわち、手続だけを比較してどちらが良いかを断言することは困難であり、どちらの方式を採用するかは、2人の事情を考慮する必要があります。決定にあたっての大きな考慮要素となるのは、婚姻後の定住国、ビザ取得の要否・滞在可能期間、現状準備できる書類の有無、書類申請先・提出先へのアクセス等になります。
この点で最も重要なのは、以下の2点です。
- 予めどちらの方式を採用するのかを決めること
- 申請先・提出先の機関へ必要書類を確認しリストを作成すること
以上、長文となりましたが、「ベトナムと日本の婚姻制度・離婚制度(ベトナム人と日本人の婚姻編(2))」でした。
次回予定テーマは、「ベトナムと日本の婚姻制度・離婚制度(総括編)」です。お楽しみに!
___________________________________________________________________
[i] http://www.vn.emb-japan.go.jp/jp/consulate/jp_marriage.html[ii] 婚姻要件具備証明書には次の2種類があり、種類により提出書類等に違いがあるので注意が必要です。
【証明書の種類】
① 申請者本人が独身であり、かつ日本の法令上婚姻可能な年齢に達していることを証明するもの
② ①に加え、婚姻相手の氏名を記載し、日本の法令上同婚姻相手と婚姻することに支障はないことを併せ証明するもの
[ⅲ] 政令No. 126/2014/ND-CP23(1),25(1)