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I. はじめに
皆様こんにちは!AGSリーガルチームの杉原です。
さて、10月より「ベトナムと日本の婚姻制度・離婚制度」と題したブログを掲載してきましたが、関連分野で未だに扱っていない重要なテーマがありました。
それは、日本人とベトナム人の婚姻手続です。
法務省は、平成28年末時点における在留外国人数が238万2,822人であり過去最高のものとなったことを発表しました[i]。日本人が外国人と接する機会が格段に多くなった現代においては、“国際結婚”は自分とは無関係なテーマとは言い切れなくなっているのかもしれません。
当ブログが“国際結婚”に興味をもつきっかけとなれば幸いでございます。
第1弾 ベトナムと日本の婚姻制度
第2弾 ベトナムと日本の離婚制度(制度概要編)
第3弾 ベトナムと日本の離婚制度(離婚原因編)
第4弾 ベトナムと日本の離婚制度(請求権者編)
II. 日本式とベトナム式
日本人とベトナム人が婚姻する場合、【日本式】と【ベトナム式】の2種類の方式があります。【日本式】とは、日本で婚姻手続をした後にベトナムで婚姻手続をする方式をいいます。
【ベトナム式】とは、ベトナムで婚姻手続をした後に日本で婚姻手続をする方式をいいます。
当ブログでは、【日本式】の手続を紹介し、次週のブログで【ベトナム式】の手続を紹介したいと思います。
III. 日本式
それでは、日本で先に婚姻手続きを行う【日本式】の手続について紹介します。 手続の流れは以下のとおりです。*【青色】がベトナム(大使館・領事館含む)での手続が必要となるものをあらわし、【オレンジ色】が日本(大使館・領事館含む)での手続が必要となるものをあらわしています。
それでは、各手続について説明します。
1. 婚姻要件具備証明書等の発行手続
後述のように、日本の役場に提出する必要のある書類として「婚姻要件具備証明書」及び「出生証明書」があります。これらの書類は、ベトナム又はベトナム大使館で取得する必要があります。いきなり漢字が並んだ馴染みのない書類がありますね…
読むだけで眠くなりそうですが、国際結婚において欠かせない書類となりますので説明します。
*【婚姻要件具備証明書】とは
その名のとおり、当事者が婚姻の要件を備えていることを証明する書類となります。以前ブログ(リンク)でも扱いましたが、婚姻の要件は、国によって種々様々です。国際結婚の場合に、役場の職員がその国の要件や、当事者が要件を充足しているかを調べなければならないとすると職員に過度の負担を強いることになり、役場の混乱・手続の停滞を招いてしまいます。こうした事態を防ぐべく、当事者が婚姻の要件を充足していることは、当事者自身が証明書により証明すべきとの運用がなされています。同証明書は、在日ベトナム大使館・領事館で発行されます。それでは、各文書の取得方法を確認してみましょう。
[婚姻要件具備証明書]
ここでは、駐日ベトナム大使館での証明書の発行手続及び必要書類について紹介します。必要書類については、ベトナム大使館のHPに記載されています[ii]。● 申請書
● パスポート
● 結婚登録書に自分の名前が記載されていないことの証明書(日本の役場で発行)
● 婚姻状況確認書(べトナム人民委員会発行/発行日から6ヶ月以内のもの)
● 日本国内在住の証明書(例:住民票、外国人登録書)
発行までの所要期間は、5営業日ほどだそうです。
[出生証明書(Ho Cau)]
当事者が生まれたときに出生届を提出した場所で発行ができます。2. 日本の役場での婚姻手続
上記の書類が揃えば、いよいよ日本の役場での婚姻手続に移ります。日本の役場へ婚姻届及び必要書類を提出する必要があります。提出先については、全国の市区町村役場での提出が可能ですが、日本国籍者の本籍地の役場に提出するのが一般的なようです。その理由は、本籍地以外の場所で手続をする場合、提出書類として戸籍謄本が必要なためです。
日本の役場への提出が必要な書類は以下です。
● 婚姻要件具備証明書とその訳文
● 国籍証明書(パスポート等)と訳文(婚姻要件具備証明書に国籍の記載がある場合は不要です)
● 出生証明書(Ho Cau)と訳文
ここまでの手続が完了すれば、晴れて日本における婚姻成立が認められます。
おめでとうございます!
3. 婚姻届受理証明書の取得
上記の婚姻届提出後、1週間ほどで婚姻届の受理通知書が届出人の住所宛に届きます。通知書が届いたら、婚姻届提出先の役場で婚姻届受理証明書を2通発行してもらいます。2通の発行が必要なのは、以下の手続で同証明書が必要となるからです。
● ベトナム側での婚姻手続
● 配偶者ビザの申請
以上の手続をもって日本側で必要な手続が完了しました。
続いて、ベトナム側で婚姻成立を認めてもらう手続に移ります。
4. ベトナム大使館での婚姻手続
ベトナムへ直接赴かなくとも在日ベトナム大使館で婚姻手続をすることが可能です。以下の書類を提出します。
● 婚姻受理証明書
● パスポート(日本人配偶者・ベトナム人配偶者ともに提出が必要)
● 住民票
以上の手続が完了すれば、婚姻成立がベトナム側でも認められることになります。
2度目のおめでとうございます!
IV. おわりに
以上が【日本式】の婚姻手続となります。日本人同士の婚姻の場合、形式的な要件としては「婚姻届の提出」のみで足ります。他方で、国際結婚の場合は、文字を追うだけでも気が遠くなるような数々の手続が必要となります。
この国際結婚の手続の複雑さこそが、日本やベトナムに限らず、様々な国で制度・文化が異なることを物語っているような気がします。
また、調査をしていて印象に残ったのが、HPやブログ等で情報に違いがある点です。
これらは、単なる情報発信者の誤りではなく、法改正や制度・運用の変更等の影響で、日々情報が更新されていることのあらわれなのではないかと思います。例えば、ベトナムでは、昨年の戸籍法施行により、戸籍登記手続の権限が各省・市の司法局から区・郡レベルの人民委員会に移譲されました。また、婚姻手続に際し実施されていた、外国人への面接も廃止されました(ちなみに、この面接が必須となったのは2006年からです!)。同法施行の結果、婚姻手続に要する期間が従来の半分程度(約15日間)になったそうです[ⅲ][ⅳ]。
上述の手続でおわかりのように、必要書類の中には、日本で入手することができず、実際にベトナムに足を運んで入手しなければならないものもあります。すなわち、書類に不備があれば、書類入手のためだけに再度渡越しなければならないという事態も生じ得るということになります。
ベトナム人と婚姻予定のある日本人の方々は、書類収集に先立ち、関係機関へ現在の制度・運用の確認のために問い合わせをすることを強くお勧め致します。
以上、「ベトナムと日本の婚姻制度(ベトナム人と日本人の婚姻編(1))」でした。
次週のテーマは、「ベトナムと日本の婚姻制度(ベトナム人と日本人の婚姻編(2))」です。お楽しみに!
[ⅰ]
平成28年末現在における在留外国人数について(確定値)
[ⅱ] http://www.vnembassy-jp.org/ja/%E3%83%99%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%A0%E5%85%AC%E6%B0%91%E3%81%A8%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%A9%9A%E5%A7%BB%E5%B1%8A
[ⅲ]
http://www.viet-jo.com/news/law/160106090202.html
[ⅳ]
Decree No: 68/2002/ND-CP16,19 / No: 69/2006/NĐ-CP1(4)a,(5),(6)a